第4話

あたしの部屋は3階。




って事は、痴話喧嘩の側を通らなきゃ部屋には戻れないって事で。




でも他人の喧嘩を聞きながら素通りする勇気がないあたし。




(収まるまで待つか……)




と、小さく溜息を吐き出した時。




スカートのポケットから聞こえる着信音に心臓が大きく飛び跳ねた。




スマホの画面を確認しなくても分かる、1人だけ着信音が違う相手に、頬が熱くなる。




『もしもしっ』




ウキウキと弾んだ声で電話に出れば、向こうから聞こえるのは優しくて温かい、あたしの大好きな低い声。




『ひより、引っ越しは落ち着いた?』




『うん!やっと片付いて、コンビニに夕飯買いに行ってきたところ』




電話の向こうからは、車やバイクが走る音が微かに聞こえてくる。




そんな雑音を掻き消すかの様に、大好きな声が言う。




『あんまりコンビニ弁当ばっかり食わないで、ちゃんと作れよ?体に良くないから』




今朝も聞いた言葉が、再び耳元で聞こえて思わず小さく笑いを零した。




『どうした?笑うところか?』




小さな戸惑いを含んだ声に、あたしは首を振りながら答える。




『ううん。今朝、パパにも同じ事言われたから。ホント、俊ちゃんってパパみたい』




あたしの言葉に、電話から小さな溜息が零れる。




『俺はひよりのパパじゃなくて彼氏。ったく、そのうち俺の事パパって呼びそうだよな』

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