第2話 こんにちは異世界
「えっと、えぇ……なんで?」
寝て起きたらなんか知らない部屋にいた。
お上品に飾られた白い部屋だ。お洒落に疎い俺でもここが特別だと分からされる高級感。まるで日本じゃないみたい。
興味深く周囲を見渡すと、立て掛けられた豪華な鏡越しに自分と目が合う。そこに映る人物を見て、俺はあんぐりと口を開けたまま固まった。
「は?」
それは自分ではなかった。
ピッカピカに磨かれた鏡面には、見慣れたぶっさいくな日本人はいなかった。
歳は十歳程だろうか。サラサラな金髪、色素が薄く綺麗な肌、そして彫りの深い顔。どう見ても外国人ですって感じのツラをしたガキが、驚いたように口を開けて固まっている。
それだけでびっくり仰天モノだが、さらに驚くべきはーー
「ぶっっさ。いやデブ過ぎだろ」
このガキ、死ぬほど不細工。多分元のパーツは悪くないんだろうけど、全身には溢れんばかりの肉が搭載されており、最早原型がわからない。
あれだ、首がない、顎がない、腕が足。非常識レベルのデブによくあるやつ。それが鏡に映るガキだった。
俺が右手を上げると、そんなデブも鏡の中で右手を上げる。
「いや、え?」
なんだこれ。まるでこのデブガキが俺みたいじゃんか。なんだ、なんだなんだなんだ?
本当に意味がわからない。なぜこんな場所にいるのか、なぜ俺が違う人間になっているのか。大掛かりなドッキリ?いや、場所の変化はともかく、特殊メイクをしたってこの顔と体にはなれないだろ。
「ま、寝るか」
どうせ考えても仕方がない。一旦寝て起きて考え直そう。そう思ってベッドに戻りーー
「ま じ か」
寝て起きても変わらない現実。デブスなガキを見て俺は現状を受け止めざるを得なかった。
たぶん、あれだ。異世界転移、転生、それとも憑依か。いや夢だとありがたいんだけど。とにかくそーいうやつに直面してしまったらしい。
最悪だ。何が最悪かって、
「こーいうときは俺が知ってる作品になるだろ普通」
そう。俺はこんなデブスのクソガキを知らない。だからこの世界のコンセプトも何もかもわからない。
シリアス即死上等世界観だったらもたもたしていられないんぢけど。どうせならのんびりスローライフハーレムとかだとありがたい。
なんて考えていた時だった。
五感に何の反応もないのに、まるで虫の知らせのように、身体が何故か天井に注意を向けたのだ。そうしてみたそこには、
「まじか。これが気付かれるのかよ、オイ」
「え、なに?」
全身真っ黒な服に身を包んだナイフ持ちの男がへばりついていた。
どこからどう見ても不審者。というか多分暗殺者。
どうやらこの世界はかなり命が軽いらしい。
「わりーけど死んでくれ」
「え、いやです」
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