第5話

他愛ない話をして、はる音のココアが底をつきそうになってきた頃。




「はる音、おかわり、いる?」


「……。」


「はる?」


「……。」


「(…寝てる。)」




肩にもたれていたはる音は、眠ってしまったようで。


起こさないように自分の膝に頭を預けさせ、近くのソファーに腕をのばして、ブランケットを取り、はる音にかける。


はる音は、寝ている時、口を開けてしまうようで、それは、今日も今日とて健在だ。


(……可愛い。)




耳にかかっていた髪がさらっと顔にかかる。


それを、もう一度かけ直す。



本当に成人しているのか疑わしい程、あどけない表情だ。


こんな姿、余所で見せてはいないだろうか、といつも不安になる。


大丈夫だよー、幸人くんは心配性だな、とはる音は笑うが、はる音の言う大丈夫ほど頼りないものはない。



(そもそも、意味分かってんのか?)



俺の言うそれは、見んな、触んな、そんな独占欲。




「(……なんか、むかつく。)」




想像で勝手に中てられて、はる音の頬を柔く摘まんでみる。




「…ん、」



それに反応したようで、はる音は薄っすら目を開けた。


(あ、…やば)




「……んー?」



焦点のあっていない視線は、やっと俺を認識したようだ。




「わるい、悪い。起こしたな。」


「…なんか、した?」


「ん?(…したけど。)」


「…な、んだ、なんか触られた気が…」


「何もしてねーから、まだ寝てていいよ。」




そう、言ったが先か、既にはる音の目は閉じられていた。





「はる音、…好きだよ。」

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