第4話

____________








「幸人くん、幸人くん。」








日曜日の昼下がり、ふとリビングから呼ばれる声に、ん?と返せば。







「こっちおいでよー、いい天気だよー。」






と、元気いっぱいの声が返ってきた。



相変わらずな奥さんに、思わず笑みが溢れ、微笑み返す。



愛おしいとは、きっと、こういうことを言うのだろう。



早くー、と急かす彼女に、待つように伝えると、





「いーもんねーだ。」






少し、拗ねたようだ。




でもきっと、



喉が乾いたと言うであろう奥さんに、好物のココアを準備する。


自分には、コーヒーを淹れ、向かった先は、





ベランダ……ではなく、その前のラグである。



日差しがさしこんで、ちょうどいい。


俺が来たことに、気づき、いや、来ることが分かっていたようで、ありがと、とココアを受けとる。




「喉、乾いてたの。」


「(……やっぱり、)」




ごくごくと勢いよく飲み進める姿がおかしくて、口元に手をあてると、なに、と睨まれてしまった。


ん?と返せば、またバカにしてる、とむくれてしまった。




むくれながらも、自分の隣をトントンと叩く。


(…かわいい。)



隣に腰を下ろすと、嬉しそうに微笑む彼女。



いつものように、頭を引き寄せ、肩にもたれさせると。


わーとか言いながら、俺の肩にすり寄ってくる。



(はる音は意外と、策士なのかもしれない。)





「あったかいねー、」


「そうだな。はる音、どこか行かなくて良かったのか?」


「んー?いーの。日向ぼっこ気持ちいいからー。」


「(…日向ぼっこ)」


「………。」


「(ひなた……)」


「あ、また日向ぼっこばかにしてるー。」








分かってるんだからねーと頭をぐりぐりしてくる彼女に、バレたかと笑い、はいはい、唸らないのと宥める。



(なんか、)



幸せだな、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る