02 戦費の向こう
翔はフリーデリケと共に、王宮の書庫へと向かい、国の財政に関する膨大な記録に目を通し始めた。そこには、戦費が大幅に増加し、同時に税収が急激に減少している現状が記されていた。物資の調達や兵士たちの給料も滞り、国全体がもはや限界に近づいていることがわかった。
「これは…思った以上に深刻ですね。」翔は眉をひそめながら、記録を読み解いていった。「まずは無駄な支出を削減し、国民に負担をかけない形で税制度を立て直す必要があります。」
フリーデリケも翔の隣で資料を眺めていた。「この戦争が終わるまで、国民に耐えてもらうしかないと政府は考えていましたが、それが国をさらに窮地に追い込んでしまっています。」
翔は深く頷き、机に広げられた資料を指差した。「この項目に注目してください。軍に対しての支出が不自然に高くなっています。これ、どこかで不正が行われている可能性があります。まずはそこを精査し、改革を進めていくべきです。」
フリーデリケは驚きの表情を見せた。「確かに、これほどまでに膨大な額が必要だとは考えにくいですね。もし不正が発覚すれば、軍部内でも大きな問題になるでしょう。」
翔は力強く言った。「この不正を明らかにし、無駄を削減できれば、今後の戦争の資金にも余裕ができ、国民の負担を軽減することができるはずです。」
翔とフリーデリケは、さらに記録を詳細に調べ続けた。翔は一つの帳簿を手に取り、ページをめくりながら言葉を選んで話し始めた。
「フリーデリケ、ここを見てください。この数年で急激に増加した物資の調達費用が目立ちますが、明らかに市場価格と比べて異常に高額です。これだけの差が出るのは、単純なインフレでは説明できません。背後に何かがある。」
フリーデリケも翔の指摘した部分に目を通し、慎重にうなずいた。「あなたの言う通りです。通常、戦争時に物資の調達が難しくなることはありますが、ここまでの価格高騰は不自然ですね。供給業者か、あるいは軍内部で利権が絡んでいる可能性が高いです。」
翔はさらに考えを進め、別の書類に目を移した。「この調達契約書、調べる必要がありますね。大口の契約がいくつかの特定の商人に集中しているようです。もしこれが、彼らとの裏取引だとしたら…。」
フリーデリケは鋭い眼差しを見せながら、翔の言葉に応じた。「つまり、戦争の混乱を利用して私腹を肥やしている者がいる、ということですね。これを暴けば、国全体に良い影響が出るかもしれませんが、同時に反発も強いでしょう。軍部や商人たちの一部には強力な権力を持つ者もいます。簡単にはいかないかもしれません。」
翔は深呼吸をしてから、決意を込めて答えた。「確かにリスクは大きいですが、放っておけば国は崩壊します。今こそ、国を救うために真実を明らかにしなければなりません。無駄な支出を削減し、国民に負担をかけずに、戦争を続けるための持続可能な財政体制を作り上げることが急務です。」
フリーデリケは少し微笑みながら、翔を見つめた。「あなたのような人材がこの国に現れて、本当に心強いです。経理担当者としての鋭い目が、まさに今この国に必要なものです。王にもこの件を早急に報告し、協力を得ましょう。」
翔はうなずき、資料を片付ける手を止めた。「まずは、内部の調査が必要です。どのようにしてこの不正の証拠を集め、暴くか、その計画を立てましょう。無駄な支出を削減できれば、今の財政を立て直す大きな一歩になります。」
フリーデリケも真剣な表情で応じた。「私たちが持つ情報をもとに、まず信頼できる役人たちに声をかけ、内部から協力者を募りましょう。不正を暴くためには慎重に行動し、確実な証拠を手に入れなければなりません。軍部に動きが漏れる前に迅速に進めましょう。」
翔の新たな挑戦は、戦争の最中、軍部と財政の闇を暴くことから始まった。戦争が続く中で、翔は戦場に送り出される兵士たちのためにも、彼の持つ知識と力をフルに発揮して、王国を救おうと決意した。
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