第29話

そんな過去を振り返っていると、


(佐々木さんの寝顔を見ながら…)




「…ん、起きたの。」


「はい、たった今。」


(…嘘だけど)




「・・嘘つけ。お前、朝弱えだろ。いつも、もっと不機嫌だよ。」


(やっぱり、)



「…バレました?実は1時間前に起きてました。」


(…ばれた)



「・・・ん。おはよ、秋乃。」


(ちょっと、その色気をしまって…)



「おはようございます。」



「…ん、なんかいい匂い。飯、作ったの。」



「・・はい。温めておくので、シャワー浴びてきたらどうですか。」



「…んん、わかった。」




と、言いながら状態を起こし、私の腰に絡みつく腕。


自然と閉じられる瞼。





なんか、ごく自然に…



「…秋乃、それされると余計起き上がれないんだけど。」



佐々木さんの頭に手を添えていた。





「…ずっと思ってたんですけど、佐々木さんも朝弱いですよね。」



ふふっと



笑いながら佐々木さんがいつもしてくれるように頭を撫でてみる。




「・・いや、弱くなかったはずなんだけど。何でだろ。」




と真剣に考えだす佐々木さんを見て、再び込み上げてくる笑いを抑えることはできなかった。




「佐々木さんって。

私のことマイペースって言いますけど、佐々木さんもですよね。」



ふふっと笑っていると・・




「・・いや、俺はちげーよ。ちょっと今頭働いてないだけで・・」




もう、何を言われても抑えられない私に


(…はいはい)




「なんか、むかつく。なに、笑ってんだよ。」




そう言いながら、私の腕をとり佐々木さんの胸に飛び込む形になった。



(ちょっ、)



「むかつくから、お前も一緒に寝るぞ。」


(近い…)



「…え。それは、困ります。遅刻しますよ。」




「・・んー、いいよ。送ってく。今日、車で来てんだよ。」




「え、じゃあ、確信犯ですか。」




「んー?聞こえないな。」




「・・・もう。」




仕返しとばかりに、頭を撫でられて




「…ちゃんと起こしてやるから。」




という言葉とともに、私は再び眠りに誘われた。


(あー。せっかく、早起きしたのに。)

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