第13話 希望、崩れる
シェイプシフターを倒してから数分。僕たちはこの森からどう逃げるか模索していた
「目印として置いていた石も、もう信用できない。いっそ、真ん中へ進むべきなんじゃないか?」
「それでは我々に対処できないモンスターが多く発生している可能性が高すぎます!休む時間を最小限にし、とにかく外を目指すべきです!」
「それで今まで何度も失敗してきただろ! 元凶さえ討てば森から出られるかもしれないんだ!」
「それはあくまで仮説です! 仮に元凶を討てたとしても、脱出できるとは限りません!」
レオンとハンスが声を荒げ言い合っている。僕とアルラーはまるっきり蚊帳の外だった
(たしかに、外へ出る方法は見つかっていない。でも、中心へ向かうのも危険すぎる……じゃあ、どうすれば……)
ふと、脳裏をよぎったのは、目印として積み重ねていた石のことだった。その数が、そして間隔が、徐々に少なく、広くなっていっていた気がする
(もし本当にループしているなら、石の配置は毎回同じはず……。でも、少しずつ変化している。ってことは……ループじゃない?もしかして、森自体が動いているのか?)
確信なんてない。でも、僕の勘が「試してみろ」と言っているようだ
「なあレオン!」
「なんだヒロト、今は――」
「この森を抜けれるかもしれない」
「……それは、本当なのか?」
「確証はない。だけど、試してみる価値はあるはずなんだ」
僕はいま思いついた仮説をみんなに伝えた
「……言われてみれば、石の数は確かに減ってたな。やってみる価値はある」
話し合いの結果、僕たちは二手に分かれることにした。レオンとハンスは脱出を試みて外を目指し、僕とアルラーはその場に留まり、後ろから彼らが戻ってくるかどうかを確認する役目になった
連絡手段として、レオンたちにはネズミ型の召喚獣を同行させ、仮に野営地に辿り着いても僕らがいなければ引き返して報告させることにした
「それじゃあ、行ってくるよ」
「ああ、気を付けて」
そうしてレオンとハンスは静かに歩き出し、すぐに暗い森の中へと飲み込まれていった
「……あとは、僕の仮説が正しければ、レオンたちは戻ってこないはず……」
「でも、結構いい線いってんじゃない?石の数も少なくなってたし。私はその仮説は合っていると思うわ」
「そうだといいんですけどね……」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「彼の洞察力は見事ですね。あの目印に違和感を抱くとは、僕には思いもよりませんでした」
「本来、俺たちでも気づけたはずだった……でも、なぜ思いつけなかったんだ……?」
「もしかしたらそういう術がこの森に施されているかもしれません。気を引き締めて進んでいきましょう」
しばらくして、ふたりは野営地へとたどり着いた。弘人とアルラーのいない野営地に
「……着いたな。仮説は当たっていた」
「はい。では、ヒロトさんたちに伝えましょう」
「そうだな。ほら、伝えに行ってくれ」
レオンは肩に乗せていたネズミを優しく撫で、指を鳴らして送り出す
召喚獣は音もなく森の中へと駆けていった
「あれ、ヒロト?」
その声を聞いた瞬間、僕の背筋に冷たいものが走った。振り返ると、先に進んだはずのレオンがそこに立っていた
「な……レオン!?先に行ったはずじゃ……」
「どうやら、本当にループしているらしい。仮説は間違っていたようだ」
「そんな……」
「気にするな。大事なのは、次にどうするかだ。先へ進んで、“元凶”を討ちに行こう」
「……ああ、そうだな。もう、進むしかないんだな……」
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