第8話 食事

解散した後、街をぶらぶらと散策していた

(スタンピード…漫画だと街を飲み込む恐ろしい災害…なにか対策とかはないのか…)

そんなことを考えていると、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。ふと気づけば、いい匂いを漂わせる一軒の店の前に立っていた

「いい匂い…」

グゥ~と鳴るお腹、ウォーウルフとの戦闘を思い出し一気に腹が空いてくる

「連戦ってわけじゃなかったのにこうもお腹が空くとは…腹が減ってはなんとやら、いざ飯を食うぞ!」

そう意気込み、店へ足を踏み入れる。店の名は──獣の胃袋亭。中は表より数倍も強く香ばしい匂いが立ち込め、腹が一層騒ぎ出した

「いらっしゃい!どんな飯がいい?」

「肉と野菜をバランスよくしてください」

「あいよ!しばらく待っててくれや!」

しばらくして、目の前に運ばれてきたのは香ばしく焼かれた肉に鮮やかなタレ、そしてシャキッと音が聞こえそうな新鮮な野菜が添えられた一皿

「お待ちどう!炭火焼鉄火盛りだ!料金は一律銀貨9枚だぜ。少し割高かもしれんが、食えば値段に納得するかもな!」

そういわれたが目の前の料理に目が釘付けになる。カリッと焼けた肉の表面、てらてらと光るタレの艶。野菜はどれも新鮮で、食べやすいよう一口大に切られていた。

ごくりと唾を飲み込み

「いただきます…」

肉を一口。外は香ばしく焼かれ、中は柔らかくジューシー。噛むたびに溢れる肉汁に、ピリッとしたタレが程よく絡み合い、たまらない旨味を生み出す。野菜もシャキシャキで、肉の脂を程よく中和し、互いの良さを引き立て合っている。夢中になって食べ進めていたら、気づけば皿は空だった

「ふぅ…ごちそうさまでした…」

「いい食べっぷりだったぜ兄ちゃん。そんなに美味そうに食ってくれると料理人として冥利に尽きるぜ」

「こんなにおいしいの初めてかもってぐらい最高でした!また作ってください!」

「あたぼうよ!」


支払いを済まし店を後にしようとすると

「おいおい兄ちゃん、一枚多くないか?俺は一律9枚って言ったはずだぜ?」

「あんなに美味かったので一枚多めに出しました。チップってやつです。ごちそうになりました!」

そういうと店主は嬉しそうにしながら僕を見送ってくれた。空は赤く染まり、胃が満たされたせいか自然と眠気が湧いてくる

「ふぁ~…よく食べたなあ…少し早い気がするけど今日はもう寝るか…」

そのまま宿に戻った僕は、顔を洗うのも忘れて深い眠りについた…


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


同時刻の森、調査していた冒険者は全員バラバラに走って逃げていた

「クソッ!あんなのが出てきているなんて、昨日までは普通だったのに…!」

背後から迫りくる咆哮から逃げていくと、ついに崖まで着いてしまった

「しまっ…」

言い終わる前に頭を砕かれ、その体は力なく崩れ落ちた。化け物は自分が作った死体を貪る…その目は獣のような鋭い目つきではなく、人と同じ…いや、近しい目をしているが人とは違うと一瞬で分かる目だった

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