第18話
塩顔に、と優は小さな声で呟くと二度咳払いをしてから目を伏せた。
「風邪?」
「いや、違う」
「そう……。優は整形したいの?」
「いや。嫌だしたくない。自分の顔が変わるとか気持ち悪いだろ。慣れる気がしねぇ」
「じゃあ整形しなくていいよ」
「でもお前は塩顔の奴がす……、」
優は話している途中で素早く自分の口元を押さえた。
「……な、何でもねぇ」
私と目が合うと恥ずかしそうに目を逸らしてそっぽを向く。どゆこと? 優の行動を不審に思いながらも、伝えたいことをちゃんと伝えるために、「あのね」とばつが悪そうな横顔に向かって話しかけた。
「後悔したこともあるのかもしれないけど、私は優のお母さんが優を産んでくれたこと、心の底から感謝してるよ。だって、もし産むのをやめてたら、私たちは出会えなかったし幼馴染として繋がることもできなかった……。私は優と幼馴染になれて本当によかった」
「確かにそうだな。俺もお前と会えて幼馴染となれて本当によかったって思ってる」
「あのね……。私、中一の時に悠花に言われたの。仲のいい幼馴染がいるのって奇跡なんだからもっと大切にしなきゃ駄目だよって。本当に奇跡だと思う。大切にしてるつもりだったけどもっともっと大切にしようと思う。あっ……。そういえばさっきお母さんも悲しむって言ったけど一番悲しむのは私だから。優が死んだら私も死ぬ」
「死ぬなよ……。でも俺もお前がいなくなった世界では生きていけない。だけど……共依存したら駄目なんだよ」
優はそう言うとため息を吐いて背中を丸めて深く俯いた。
「共依存したら……、何で駄目なの?」
それはだな、と腕組みをした優は授業中や図書館で勉強している時に浮かべている真剣な表情に変わった。
「うん」
「今はよくてもこれから先、徐々にお互いがお互いに悪影響を与えるようになって、最終的に共倒れしたりする恐れもある。だから、自立してお互いに一人の時間を大切にした方がいい。灯莉が毎日俺ん家に来ていること、俺のお母さんは凄く喜んでるけど、一人の時間や俺以外の奴……、友達といる時間を増やした方がいいと思う」
「……もしかして迷惑だった? ごめんね、気づかなくて。ちょっと甘えすぎてたかも……。やっぱり私は妹のままだ。ちっとも成長してない」
「迷惑なわけあるかよ。成長してるし俺は妹のままでも構わない。でもこれは俺たちのためなんだ。健康に生き続けるために。四六時中一緒にいなくても俺は何も言わずに消えたりしないから大丈夫だよ」
「分かった……。信じるよ。一人でいる時間と悠花たちと遊ぶ時間を確保する」
「ああ、俺も一人でいる時間と天翔たちと一緒にいる時間を確保する。だけど無理はするなよ。ちょっとずつ灯莉のペースでいいから」
「うん分かった」
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