第11話

 みんなは優のことを冷静沈着で頼もしいって褒めるし私もそう思う。けれど、みんなは優が誰よりも繊細で傷つきやすいことに気づいていない。

 気づいてしまった私はいつも優のことを心配していて、だから優と一緒にいるのは楽しいけど実は一緒にいる時もいない時もずっと怯えているんだ。

 今朝、優に不意打ちで話しかけられてそのままお喋りしながら登校したから、心の中で言い損ねてしまったけれど、私が最も恐れていることは優が自殺すること。正直言うと、私も優と同じように死を切望している。学校に通っている間は屋上から飛び降りたいという衝動に駆られるし、夜中に自分の部屋で首吊り自殺したくなる。

 でも、私は優の自殺を止めるためにどんなに死にたいと思っても死なわけにはいかない。私が毎日欠かさずアプリでメッセージを送るようにしているのは優の生存を確認するためだ。


 俺は天寿を全うする気はない。自分の命の炎は自分で消す。……なんてな。だらだらと生きるより潔くよく死んだ方がなんかかっこいいだろ?

 

 小四の放課後、両親が仕事で留守の家に遊びにきた優が私にそう言った時、笑っていたけれどひどく思い詰めた表情をしていた。

 部屋に差し込んだ夕陽が照らしている顔の右側はいつものすぐるんで、左側は別人で私の知らない優がそこには居た。それに左目の視線は、確かに私に向けられているのに私が見えていないかのように、光が全くなく虚ろだった。

 だから冗談ではなくて本音だと気づいた。優は十秒ぐらい私を見詰めてたけれど逃げるように背中を向けて座った。

 多分、これ以上顔を見られたらまずい、と判断して取った行動だと思う。でも、私はもう優の異変に気づいてしまった。

 目の前にある背中は珍しく猫背になっていて、一瞬でも目を逸らしたら消えてしまうと本気で心配になるぐらい、儚げで弱々しかった。

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