第331話 研究所
こんにちは。ロウです。情報が欲しい。
王都跡地の端にある研究所に来ている。遠くからだと建物が壊れているようには見えなかったが、正面の扉は外から破壊されていた。
中は荒らされたように物が散乱しているが、建物自体は丈夫みたいだ。外から見た感じは、お城の様子と比べても、こっちの方が状態が良いと思う。
それだけ、危険な研究もしていたのかな? 魔導兵器などの兵器開発をしていたなら、頑丈じゃないとダメか。
「薬品とかあるかもしれないから、気を付けていこうか」
「はい」
「じゃあ、まずはゴーレム君のいた場所から調べていこうか。案内できる?」
『うん、こっちだよ』
ゴーレム君がそわそわしているので、まずは塔の地下にあるらしい部屋からだ。
廊下の散らばった物を遠隔で収納しながら進むと、強引に開けられた頑丈そうな金属扉が見えてくる。
『あれが塔の入り口だよ。開けるには、あるじが持っていた四角い魔法鍵が必要なんだ。今は開けられているから入れそう』
「魔法鍵は、まだあるの?」
『たぶんあると思う。あるじの机とかにしまってあるかも。必要なの?』
「この扉と一緒に研究したいんだ」
『分かった。探しておくね』
「ありがとう」
そんな話をしながら、壁をスキャンして、部品を壊さないように風魔法で壁と切り離して、魔法鍵の認証機能部分と一緒に扉を回収する。これも俺にとってはお宝だ。
塔に入ると正面にある部屋に入っていく。物置みたいな場所で木箱が全て開けられた状態で朽ちていた。それらを収納していくと、ゴーレム君が奥の壁に向かう。
エリアサーチを発動すると、隠し部屋があるね。ゴーレム君が思い出すような仕草をしながら仕掛けを起動する。ゆっくりと開く壁に見える隠し扉。
その中には下りるための階段だけがあった。
『ここから先が、隠されている研究部屋。あるじのための場所なんだ』
何となく空気が悪い気がする。風の生活魔法で空気を生み出し、新しい空気を吸えるようにしながら進む。
階段を下りると複数の部屋への扉が開いた状態だ。
『逃げる時に扉は閉めたから、誰かが入ったのかも』
そう言って、真っ直ぐ奥の扉へ向かう。手前の他の部屋も気になるけど、ゴーレム君の後を追う。
部屋に入ると、奥の壁に向かうゴーレム君。そこには、魔導兵器の体を固定できそうな物が置いてある。あそこで修理や改造をしていたんだろう。
『ここが僕の場所。ここでいつも扉から入ってくる、あるじを待っていたんだ』
そう言って立ち止まり、じっと静かに眺めている。
そっとそばに行くムルル。
「大丈夫?」
『うん。懐かしいんだ。ここは思い出の場所。ここで歩く練習をしたり、あるじとお話したりしたんだ』
部屋を見渡し始めるゴーレム君。今は、ほとんど物が置かれていないけれど、当時の光景を思い出しているんだろう。
『この部屋は逃げた時と変わらないと思う。あの時に、持って行ける物は持って行ったから』
「この固定台は思い出の物なんだね。これと同じ物はあるの?」
『あると思うけど僕は知らない。これじゃあダメなの?』
「これでもいいね。もらってもいい?」
『うん、ロウが使うならいいよ。大事に使ってね』
「ありがとう。大事に使うよ」
魔導兵器の固定台を地面から切り離して収納する。そして、エリアサーチを発動する。隠された空間はなさそうだね。後は壁に取り付けられた棚や空の木箱くらいなので、他の部屋を見ていく。
『ここに魔道具の材料が置いてあるんだ。逃げる時に持てる分だけ持って行ったんだけど、まだ置いてあるね』
「逃げた時に探されたかもしれないけど、戦いの時には地下は見つからずに荒らされていないんだろうね。もう使う人もいないし、全部もらっていこう」
木箱や樽ごと収納して、エリアサーチを発動する。ここも特になし。次の部屋だ。
「ここは何の部屋なの?」
『あるじの部屋。ここは僕が入っちゃダメな部屋なんだ』
「入っちゃダメ? 禁止されていたの?」
『うん。あるじがダメって言っていたから、入った事がないんだ』
「今は大丈夫だろう。入ってみよう」
本棚がある部屋だった。机があるので、調べものをする部屋なのかな? エリアサーチを発動する。奥の仕切り板の向こう側には、工具が置いてある作業机があるね。ここで開発とかをしていたのかもしれない。隠された空間はないな。
「ここで開発した物を、ゴーレム君の体に追加していたのかな?」
『そうかもしれない。危ないからダメだったのかな?』
「うーん、魔導兵器の体だと危なかったのかな? 本体の方は、そもそも魔導兵器から出るのがダメだから、どっちにしても無理なのか。まあ、今は誰も開発していないから平気だろう。作業机は工具ごともらうとして、本は数が多いから、早めに復元を始めた方が良いかな。目的の工房主の情報があるかもしれない。フェリナ、屋敷に移動させるからお願いできる?」
「はい、頑張ります」
「同化の首飾りを渡しておくよ。もしかしたら、同化の馴染ませる効果が、復元を補助できるかもしれないから試してみて。一応、植物を再生する実験だと上手くいったから」
「ありがとうございます、試してみますね」
「念話は切るから、何かあったらバロンに絆で連絡して」
「はい。あっ、あと、夕食は少し豪華にしてください。復元はお腹が空くので」
「分かった。何か食べたい物はあるかな? それも作るよ。大変だし、ちょっとしたご褒美があるといいよね」
「じゃあ、デザートのフレンチトーストのハチミツアイス付きをお願いします」
「了解。夕食は任せてくれ。じゃあ、送るよ」
本棚はフェリナに任せて、残りの部屋を見に行く。
『ここは道具とかを試す場所。あるじも実験していたみたいだけど、僕もここで体の新しい機能を試したことがあるんだ』
「頑丈な部屋だね。ここが実験室か」
頑丈な扉を入ると、さらに中に頑丈そうな小部屋があった。その小部屋で実験をしていたらしい。エリアサーチを発動する。隠された空間はない。
小部屋の外壁には手を置いて操作する魔道具があり、小部屋の中の魔導兵器の腕みたいなものを動かせる。魔力を流すとつながった感覚があり、簡単に動かせたよ。
操作する魔道具の正面の壁には、丁度顔の高さの位置くらいに分厚いガラスのようなものがあり中が見えるんだ。
これを使って、安全に魔道具の試運転ができるようにしてあるんだろうな。
それにしても、この腕を動かせる魔道具はいいね。ロコが使えるなら、もっと楽に宝箱が開けられそう。バロンにも便利そうだな。
「ロコ、ここに乗ってみてくれる」
「ぷるっ?」
「魔力を流して魔道具を使ってみて欲しいんだ」
「ぷるるっ」
右手の方に乗って試してもらうと、あっさりと動かせた。窓の部分に届かないロコは、精霊視で壁の向こうの魔道具の手を見ながら器用に動かしていた。
これは部屋ごと欲しいので、廊下に戻り大工事だ。
スキャン魔法を使いながら、慎重に部屋を周囲から切り離す。
ジョブを剣武人と空間術師のダブルジョブにする。そして、大きな
最後に、みんなと協力して隙間を埋めるように、
「よし。ここは大丈夫だな。次で地下最後の部屋だな。ゴーレム君、こっちの部屋は何の部屋になるの?」
『仮眠室だよ。あるじが研究で泊まる時に使うんだ。たまに、お願いされて、朝に起こしに来ていたんだ』
中に入ると、机と椅子のセットと、ベッドだった物が置かれている。エリアサーチを発動するが、特になし。ここに在った物は、逃げる時に持って行ったんだろうな。使える物も使えない物も、ある物全て収納して移動する。
地下は見終わったので、一度箱庭の屋敷にいるフェリナの所に戻ると、すでに三冊が復元されていた。ペースが早いな。
「フェリナ、無理はしないでね。何日かかってもいいから」
「はい。まだ大丈夫ですよ。他のスキルの力も使っていますし、同化の首飾りも役に立ってますよ」
「やっぱり復元でも効果あるんだね。役に立って良かったよ。これから俺達は、塔の上の方や建物の方を見てくるよ。ゴーレム君は、復元の手伝いをお願いできる?」
『うん。復元を頑張るよ』
ここから先はゴーレム君も詳しくないので、フェリナがやっている復元の方を手伝ってもらう。
「ムルルはどうする? 一緒に行くか。ここで手伝いをするか。文字の勉強でもいいけどね」
「手伝いはあまりなさそうなので、文字の勉強をしながら手伝います」
「分かった、頑張ってね。フェリナ、何かあればバロン経由で連絡を取り合おう。まあ、大丈夫だと思うけどね」
「はい。気を付けて行ってきてください」
塔の一階に戻る。重要度的には、まずは塔を探索して、その後に建物の方かな。
王都跡地の探索も残っているんだ。何日かここで過ごすことになりそうだな。楽しみでもあるけど大変だ。
元々の目的は工房主の故郷にお墓を移動させること。故郷の情報がなければ、研究所の敷地内に作るのがいいかな? 最後はゴーレム君に決めてもらおう。相談には乗るけどね。
俺としては、王都が見渡せる山頂も良さそうだと思うんだ。
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