第329話 後の楽しみ
おはようございます。ロウです。解放された気分だ。
ようやく溶岩術師になったんだ。氷結魔法も覚えたいとは思うけれど、しばらくはいいかな。
一応、やり方としては、ウルに氷結属性の魔力だけにしてもらった状態で、マナリンクして俺が魔力を使い切れば、ウルから氷結属性の魔力が流れ込んできて満たされる。そのタイミングで、適応スキルを自分に発動するのが良さそうなんだ。
今やらないのは、フェリナの方を優先したいし、他にもやりたい事がある。
フェリナにも溶岩術師になってもらいたいんだ。
今は街跡を離れてゴーレム君の道案内で進んでいる。
後方で、俺は溶岩属性の魔力だけにして、フェリナとマナリンクをしている。溶岩属性の魔力で満たした状態で、フェリナに適応スキルを発動させているんだ。
この状態で、火術師の方を成長させていけば、溶岩術師へ近付くと思う。フェリナは土術師をすでに極めてあるからね。
この方法の良い所は、俺はまだ慣れない溶岩属性の魔力変換の練習ができて、魔法保管場所に溶岩魔法を溜めていける。
フェリナは呼吸で取り込んだ無属性魔力を火魔法として使い切って、溶岩属性の魔力だけの状態をなるべくキープしながら、火術師のレベル上げができる。ついでに、火魔法を使う時に暖かくも出来る。
人がいない場所だから遠慮なく出来るね。タイミング的に丁度良かったよ。
欲を言えば、フェリナには英雄の称号を獲得して、火術師と土術師のダブルジョブになってもらうのが理想だけどね。
ちなみに、他にやりたい事というのは、未知の二属性の研究だ。フェリナが溶岩術師になったらやりたいね。
雪が積もる森の先に崖が見えてきた。先頭のゴーレム君が話す。
『みんな、この先に見える崖を登るよ。記憶にある場所なんだ。逃げる時には、あるじは重いと飛べないから、僕が荷物を持って落ちたんだよ』
ゴーレム君の隣を、バロンに乗って進むムルルが、心配そうに聞く。
「それって、大丈夫だったの?」
『うん。この体は頑丈だし、あるじが言うには力を使うと衝撃が消されるんだって』
「それって光るやつ?」
『うん、足の光るやつだよ。ちゃんと魔力が溜まっていないと使えないけど、すごく便利なんだ。あるじが考えて作ったんだよ』
「すごいんだね。あるじさんは」
『うん、すごいんだ。あるじは、全てを自分で発明したわけじゃないって言っていたけど、僕のために考えて追加してくれたんだ』
崖に着くと、バロンが
まずは、ゴーレム君が登り、ムルルを乗せたバロンが続く。
「モウゥ」
「分かった。はい、しっかり掴まったよ。バロン君、よろしくお願いします」
「モウッ」
バロンは、ムルルに注意を促した後、跳んで階段を上っていく。
その後に、ウルが続いて、牧場のみんな、その後にカラが続いて、最後は俺達だ。ロコは俺の頭の上だね。
そうしてゴーレム君が記憶をたどって進んでいると、試練の導きの加護でダンジョンの情報が得られる。たまに、確認していたんだ。
「フェリナ。ダンジョンが近くにあるよ」
「ダンジョンですか? あっ! 加護ですね」
「そう。試練の導きだね。フェリナも加護を使ってみて」
「はい。……北西でしょうか? 十五階層ですね」
「うん、俺の感覚も北西だね。環境は森。ダンジョンが浅いのは、周囲が魔物の巣になっているんだろうね。それでダンジョンが餌場になっていて、成長していないんだろう。ラビスプはここから
「このくらいなら近い方ですし、そうかもしれませんね。行きますか?」
「今回は、やめておこうか。前回の街跡は、情報が得られる場所だからいいけど、今はゴーレム君の方を優先かな。まあ、転移の魔法陣を設置しておくけどね」
「小さいロコちゃん用のものですね」
「うん、それが時間がかからなくて楽だからね。今は北に進んでいるから、ダンジョン位置が真西になったら設置しようかな」
崖上の森を歩いているけれど、寒さが厳しくて、地下の巣で冬眠している魔物が多いな。それらは、無視して進んでいるので、戦闘がないまま進んで行く。
しばらくは平和だったんだけど、接近してくる魔物の気配。先頭のウルからも連絡がある。少し前後に広がっていたので、一度集合して話し合う。
「確かに、こっちに来ていますね。でも、私達に気付いている感じではなさそうですよ」
「うーん、この辺りの冬眠している魔物を狩りに来たのかな? たまたまタイミングが合っただけかも。まあ、ここまで近くに来ていたら、鼻の良い魔物は匂いに気付き始めるかもな」
『どんな魔物なの?』
「俺達は知らないな。北西のダンジョンを巣にしている魔物かな。話しかけてみるけど、襲ってきたら倒すよ。ゴーレム君はムルルの護衛で、バロンと一緒に後ろに下がっていて」
『分かった。護衛、任せて』
「モウッ」
「あの、激励しますか?」
「ムルルの激励は牧場のみんなも喜ぶよ。タイミングはバロンに合わせてね。詳しく言っておくと、激励による強化は相手に気付かれたら狙われる可能性があるけど、護衛がいるからやってもいい。まあ、回復担当と狙われる理由は似たようなものかな」
「はい。バロン君に合わせます。ゴーレム君も護衛お願いね」
『大丈夫。ムルルは守るから安心して』
「まあ、気付かれたとしても、みんなで激励すれば、ムルルだけ狙われる事は無いと思うけど、目立たないように気を付けてね」
「はい。激励した後は、静かに見守っています」
もし戦闘になるなら、牧場組はメインで戦ってもらう。その時は敵が多いから、ウルとフェリナにも数を減らしてもらおう。強い存在が一匹いるので、俺が行こうかな。情報も欲しいからね。ロコは念のため、牧場組の回復担当だ。
素早くジョブを砂嵐術師に変えて、拘束の準備。カラにも戦いになった時には、ボスの捕獲をお願いする。
相手の動きが変わったね。こちらの存在に気付いたようだ。スキルのレベルは低そうだけれど、探知スキル持ちがいるかもな。
牧場組の緊張した空気の中、雪の森の奥に二足歩行の集団が見える。総勢五十体。顔はワニだ。兜も鎧も、当然のように武器も装備している。双剣使いや盾持ちがいる。ただ、多くは剣一本の剣士かな。
クラスに気付いて設定することがないなら、未設定だろう。ダンジョン生まれだったら、ファイターかナイトクラスだろうな。盾持ちは体も少し大きいから、ダンジョン生まれのナイトクラスかもな。
そして、ナイトクラスよりも大きい一体。リーダークラスかな。ボス個体の可能性がある。その横でボスと話しているのが、探知スキル持ちかな。
まずは、話し合いができるか確認だ。念話効果も使っておこうか。
「こちらから襲う気はない。会話はできるか?」
『こちらから襲う気はない。会話はできるか?』
ボスとその横の探知スキル持ちを対象に念話でも話しかけた。すると、戸惑った表情で返事はなく、二人で相談を始めた。
話が終わったのか。ボスが、こちらを向いて剣を掲げて、振り下ろしながら叫ぶ。
「グガォー!」
「グガオッ」
「グガォー」
敵の言葉は理解しないようにしているんだけど、意味は殺せだね。
大声効果と指揮スキルを使い、相手の音にかき消されないように声を響かせる。
「戦闘開始。生き残るために倒す。怪我なく
「モーゥ!」
「みんな頑張って!」
『頑張って!』
「モウッ!」
「グワワッ!」
全員の激励が発動する。過剰だろうが怪我なく倒すためだ。俺は気配を消しながら見守る。
ブレイザ達が突撃する。敵の盾持ちが受け止める体勢になるが、足元から魔法の石の出っ張りが飛び出しバランスを崩した。そのタイミングで激突。敵は吹っ飛び、後方の仲間とぶつかって地面に倒れた。さらに、そこへ追撃の体当たり攻撃。
敵はブレイザ達を取り囲もうとするが、それはモッチル達、ファットダック五人衆が邪魔をする。魔法による攻撃と接近しての翼の叩きとクチバシの突き。鎧を着ていなかったら、邪魔どころか倒していただろう。
俺から視線が外れた。今ならいいだろう。カラと共に良い位置へ移動する。
牧場組に注目が集まる中、その頭上を走るウル。ボスが慌てて叫ぶと、ウルに向かって水の球が飛んでいく。よく見ると剣士と同じように剣は持っているが、メイジが紛れ込んでいたみたいだ。ダンジョンでは見ない光景。
ウルは慌てることなく、空中で足場を作りながら華麗に
そのタイミングでカラが探知スキル持ちを奇襲する。絆で連絡してターゲットを、変えてもらっていたんだ。その奇襲に合わせて俺も動く。
近くで起きた襲撃に驚くボスを、俺がサンドハンドで拘束すると共に口を開かせない。唸るボスに情報閲覧発動。
【名前】グルグー(アリゲイル)
【レベル】33
【クラス】クラッシャーLV16
[設定可能クラス]
パワーLV1、ファイターLV1
【称号】未設定
[設定可能称号]
なし
【加護】なし
【スキル】牙砕LV22、
【魔法】なし
牙砕が種族スキルなのか。噛み砕くんだろうけど、それも口を開けなければ無理だろうね。ワニだから口も拘束したけど、良い判断だったな。
その時、俺の方にもメイジが水の球が襲ってくるが、ミスリルの長剣で切らせてもらって、強化した刃でボスを切って仕留める。
動揺する群れの後ろに立ちふさがり逃亡は許さない。情報が伝わると困るからね。
牧場組やフェリナ、そしてウルが数を減らす。俺の方に襲い掛かってくる魔物は、剣で倒すよ。逃げようとするものは、カラか俺のサンドハンドで阻止する。
全て倒し終わった。なんだかボス部屋みたいな集団戦だったな。ここはダンジョンじゃなくて、普通の森の中だけどね。今の騒ぎで、鳥や小動物は離れて行ったな。
さっさと魔物を回収して、先へ進む。目指すは王都の跡地だ。
ダンジョンの方は後で必ず行こう。襲ってくる魔物だったのは気楽かな。遠慮なくダンジョンを自分のものにできるからね。
メインである工房主の故郷探しの後に、ダンジョンというデザートまで用意されているなんて、良い冒険になりそうだ。
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