異空庫使いの旅

善田真琴

第1章 始まり

第1話 転生したよ

 気付いたら赤ちゃんになっていた。


 現在、よくわからないまま女の人に抱かれて授乳中である。本能かな? いつの間にか飲んでいた。恥ずかしいけど空腹には勝てなかったよ。


 おそらくこの女性が母親かな? 着ている服からして異世界っぽいんだよな。何というか触った感じがゴワゴワしてる。だいぶ昔の時代に使っていたようなこんな生地をわざわざ作る方が金かかりそうじゃない?


「けぽっ」


 授乳完了。お腹いっぱいです。ごちそうさまでした。ふわぁ…眠い。

 寝かされ母が離れてどこかへ行くのを見送りながら、まぶたが自然と閉じていく。たくさん考えたいことがあるのに、強烈な睡魔にあらがえない。おやすみなさい。




 何か不快な感じがして目が覚める。どうやら漏らしたっぽいなぁ。このままじゃ寝ていられないし、落ち着いて考え事もできない。……母を呼ぶか。


 「ふぇあふぁ」


 上手く発音ができない。まぁ、当たり前か。逆に赤ちゃんが大人のようにしゃべり始めたら怖いわ。それに前世の言葉で言っても通じないだろうな。

 う~ん、ここは赤ちゃんらしく泣いて呼ぶのが正解か? でも、恥ずかしいんだよなぁ。でも、おむつ交換しないままじゃ気持ち悪いしなぁ。てか、おむつあるんだろうか? もしかしたら布が巻かれてるだけかもなぁ。


 …ていうか今思い出したんだけど、転生して赤ちゃんらしくしてないと悪魔付きとか言われてヤバイことになったりするって読んだことあるんだけど。恥ずかしいとか言ってる場合じゃないじゃん。

 よし、気合を入れて泣くぞ! 命のため、平穏な生活のため、そしておむつ交換のために!


 「うぅ、うんぎゃー! おんぎゃー! おんぎゃーーー!」




 駆け付けた母に布を交換してもらってすっきりです。ちなみにテンプレだと魔法で綺麗にしてくれたりするはずなんだけど、母はおもらしで濡れた所を普通に布で拭いてくれてた。

 魔法がない世界なのかな? まぁ、地球は魔法なかったんだけど、転生があるなら魔法があってもいいじゃない。もしかしたら勉強が大変だったり、魔法を覚える魔法書みたいなのにお金がかかるとかかな? それなら部屋の感じからして金持ちの家ではなさそうだから、母が使えなくても普通だよね。そうであってほしい。頑張れば魔法が使える世界であってほしいです。神様お願いします。


 そういえばテンプレだと赤ちゃんの時から魔力トレーニングで最強になるんだよな。自分もやってみるか。

 えっと、まず魔力を感じるところからだよな、魔力があったら魔法もあるはずだし頑張ろ。テンプレだと丹田たんでんっていうへそのあたりかな。テンプレ以外だと額の奥の脳とか心臓にあったり、人間にも魔石ませきがあったり、異世界人特有の臓器で魔臓まぞうがあったり、魂から魔力が生成される話だったり。いろいろあり過ぎて困るわ。前世の俺、異世界転生もの読み過ぎじゃない?

 まぁ、まずは丹田たんでんから確認してみるか。あれ? へその下だっけ? 上だっけ? わからん! 細かいとこおぼえてないんだよなぁ。もう全部総当たりで確認じゃ!


 思いついた順に意識を集中して魔力を感じ取ろうとする。


 へその上も下も違う、たぶん。脳も心臓も違う、たぶん。魔石ませきってだいたい心臓の所じゃなかったっけ? 魔臓まぞうどこぉ~? 魂ってどこにあんの? 誰か教えて!


 う~ん、違うとも言い切れないんだよな。下手なだけかもしれないし、やり方が違うのかもしれないし、魔力なんて前世じゃなかったんだから仕方ないよね。


 そういえば瞑想する話とかあったし、呼吸法で空気中から魔力の素を取り込む話もあったなぁ。瞑想は集中するんじゃなくてリラックスして何も考えないんだっけ? 特殊な呼吸法はわからないから深呼吸でいいかな。とりあえずやってみるか。


 「すぅ~。はぁ~。すぅ~。はぁ~。」


 あれ? 今までと何かが違うかもしれない。もしかしたらこれが正しい方法かも? もうすこし続けてみよう。


 「すぅ~。はぁ~。すぅ~。はぁ~。すぅ~。…すぅ~。」




 いつの間にか寝てた。

 仕方ないよね赤ちゃんだもの。

 まあ、たぶんやり方はあってるっぽいし、しばらくはこの方法で頑張ってみよう。


 めざせ最強の魔法使い!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る