現在
第29話
「…私の…しおり…」
さゆりは懐かしそうにしおりを見つめ、そっとしおりの縁を指先で触れながら、言う。
「…あねっ」
…いけない…。
さゆりはうっかり姉ーゆかりのことを口にするところだった。
さゆりと初めて一緒に作ったしおりで思い入れの強い品物だ。
「…庭先で摘んだ紫苑の花を押し花にして、初めて作ったしおりなの。すごく嬉しくて…いつもスカートのポケットに入れて、持ち歩いてた。あの日も…教会に持って行ってて…」
孝直は目を見開き、驚くと共に安堵する。
「良かった…やっと会えた」
「……?」
「ずっと、借りっぱなしになってたから…返さないと…って、思っていたけど、相手が分からなくて…。あの時、ありがとう」
あどけない少年のような笑顔を浮かべ、孝直は笑った。
さゆりの胸がドキッと高鳴る。
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