第27話

「…おっ…俺もっ…うたた寝したことがあるんだっ…」

「えっ…」


顔を少し赤らめ、孝直は真っ直ぐにさゆりを見つめながら言った。


「小さい頃だけど…ここの椅子に座って本を読んでいたら、いつの間にか寝てて…目が覚めたら、これが挟まってた」


孝直は掴んでいたさゆりの腕をゆっくりと離すと、持っていた本を開いた。

本のページに挟んでいたしおりを取りだし、さゆりに見せる。


「借りてた本の読みかけのページに誰かが挟んで、椅子の上に置いてくれていたんだ」


孝直は幼き日のことを思い出し、懐かしそうに目を細めながら、しおりを見つめた。


さゆりは、目の前のしおりをじっ…と、見つめた。


…どこかで…。


さゆりは、ハッとする。


「これっ!」


しおりを持った孝直の手を両手で掴み、引き寄せた。まじまじとしおりを見つめる。


「なっ、なに…?」


孝直はびっくりし、たじろぐ。


「…私の…」

「えっ…?」


忘れかけていた小さい頃の記憶が蘇る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る