第四章 想

現在

第26話

数日後ー…。


さゆりは重さのある扉を恐る恐る開いた。そっと中を見やり、キョロキョロと確認する。


…人はいないみたい…。


ホッと肩をなで下ろす。

中へ入ると十字架の前で手を組み、祈りを捧げる。


「こんにちは」


突然、声をかけられ、ビクッとするゆかり。

声のした方へとゆっくりと、視線を向ける。

さゆりから見て、斜め左側2、3歩離れたところに孝直が立っていた。片手に本をもっているので、2階から降りてきたところだろう。


「ごめん、ごめん。びっくりさせたみたいで…」


申し訳なさそうに眉を寄せ、孝直は詫びた。


…いつの間に…?


聞き覚えのある声にさゆりは、動揺を隠せない…。

あの時のことが頭の中を鮮明に駆け巡り、顔が真っ赤になる。恥ずかしくなったさゆりは慌てて、その場を去ろうとする。


パシッ…。


「まっ、待って!」


孝直がさゆりの腕を掴んだ。


「…っ…」


…どっ…どうしよう…。


さゆりは頭の中が真っ白になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る