時間(とき)は流れ……Ⅱ 続

第24話

口許を軽く手で押さえ、ゆかりはクスクスと笑いながら、言った。


「場所も確認せず、飛び出していくんだもの…」


「だって…」


少し恥ずかしそうに…さゆりは呟いた。


「早く願い事を叶えてほしかったんだもの…」


「だとしても、無鉄砲すぎよ。そのあとは、バタバタだったわね」


「…反省してます…」


「九条家に仕えてる人達が血相を変えて、探し回つて…。あなたを見つけた1人の侍女が偶然、教会の場所を知っていて連れて行ってもらえたのよね」


さゆりは、コクリと頷いた。


「あの時…あなたが迷子になって、家に帰ってこなかったら…と考えただけで怖かった…。

お父様のお怒りはとても怖いけれど…それ以上にあなたがいなくなることの方がすごく怖かった…。

九条家に仕えてる人達や勉学、料理、裁縫…あらゆることを教えてくれる人達も仕事だから、私のことを気にかけてくれているけど…私を1人の人間としてきちんと見てくれるのは、あなた…さゆりだけだから…」


ゆかりはそっと微笑んだ。その微笑みは哀しみを含んでいるようにさゆりには見えた。


「…お姉様…」


チクリとさゆりの胸が痛む。

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