第三章 再

時間(とき)は流れ……Ⅰ

第15話

数年後ー…。


少年だった村上むらかみ 孝直たかなおは…背が高く、精悍せいかんな顔立ちの青年に成長していた。


スーッと引かれた眉毛、意思の強さを感じさせる澄んだ瞳、固く結ばれた唇。

パッと見、長身でひょろ…とした細身の印象を持たれるが…筋肉質で腕まくりをしている腕も細すぎることなくがっしりとした

薄汚れたシャツに薄茶色のズボンという身なりで町外れの教会の2階で1人…本を選んでいた。


神父が趣味で集めた本は様々な種類があり、本棚には分かりやすくそれぞれの種類ごとに分類され、きちんと並べられていた。


時折、開け放された窓から風が入り、孝直の栗毛色の髪の毛や服の裾をなびかせ、通り抜けてゆく。


傾きかけた夕暮れ間近の橙色の太陽の光が部屋を照らす。

そのお陰で部屋は明るく、本の背表紙が見えやすい。


孝直は本棚に手を伸ばし、長い指先で本を取り出す。


パラパラとページをめくっていると…。


「孝直君は本当に本が好きなんですね」


「神父さん…」


黒色の祭服を身に纏った神父が孝直に声をかけた。


歳は四十を越えた中肉中背の男性だ。

白髪交じりの短髪、細目に丸い縁の眼鏡をかけている。

いつも穏やかに微笑んでいる表情が印象的だった。


孝直は、ペコリと頭を下げた。


「いつも借りてばっかりで…」


「いいんですよ、気にしなくて。本も嬉しいと思います。何度も大切に読んでくれる人がいて…それで僕も幸せな気持ちになります」


ニコッと神父が微笑む。孝直も恥ずかしそうに笑った。

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