第一章 刻
訪問者
第1話
「足元に気をつけて下さいね」
「えぇ……」
石階段を杖をついて慎重に登るゆかりを支えながら、
一段、一段ゆっくりと登ってゆく。
登りきると両開きの木製の扉があり、小暮は片方の扉に手をかけた。
ギィィ……。
少し重さのある扉が小さな音を立てながら動いた。
「……キレイ……」
日の光を浴びて、キラキラと輝くステンドグラスにゆかりは思わず声をあげた。
もっと近くでステンドグラスを見ようと歩を進める度にコツコツと杖をつく音が教会の中に響き渡った……。
「……やっと……来れた……」
「……」
小暮はそっと静かにゆかりの傍に佇み、その姿を見つめた。
「本当に素敵なステンドグラス……。毎日通いたいと、言っていた気持ちがよく分かるわ……」
……言葉……通り、ね……。
本当に……綺麗で素敵……。
ゆかりの脳裏に教会のステンドグラスが素敵なことを声を弾ませて、嬉しそうに話をしてくれた時の記憶が鮮明に蘇っていた。
懐かしい気持ちと共に……
チクッ……と、胸が痛み、瞳からじわっ……と涙が溢れそうになる……。
その時ーー……。
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