第2話 追放されました?

 待ち構えていた騎士、その中で一番立場が上の者が前に出て来る。その顔には、ニヤニヤとカイトを侮蔑した視線を向けて来け、後に居る他の騎士達も同じ様な視線を向ける。


「出来損ないのキルクス伯爵殿、今回の儀式でご令嬢も”ハズレ“の出来損ないだった事が証明されたとか!それに従って、契約通り貴方方には……この国から出ていってもらう!!」


 自信満々のドヤ顔で、叫んでいたが。カイトの方はとても冷たい視線をむけるだけで、気にせず歩き出していた。


 それに慌てて、ドヤ顔の騎士は叫び続ける。


「王太女殿下の慈悲で私財の没収と国外追放だけで、許されたと言うのに何だ!!その態度はー!!本来なら、貴様の様な出来損ないは!!殿下に婚約を破棄された時点で、処刑されているはずなのだぞ!?」


 その言葉にカイトは、周りに圧を掛けて黙らせた。


「……可笑しな事を言うな……、忘れているかも知れないが………。そもそも、アノ婚約は王命だったモノ。」


 言葉を区切り、殺気も込めて相手を睨む。


「ーーーそれが王太女殿下の浮気で、しかも私に冤罪で陥れる事をしたから破棄された。

 だから、国王陛下が判断しての婚約破棄だ、勿論アチラの有責で。

 慰謝料が爵位と王都の屋敷、それから何故か王太女殿下の取り巻きとの結婚だ。

 私の娘以外碌なモノが無い、慰謝料何だか?」


 カイトは殺気も圧も緩めず、深い溜息を吐き話しを続ける。


「あぁ、私財だったか?私から……イヤ、私と娘から奪うのは、止めた方が良い。

 その内、何かいちゃもんを付けて奪う気だと思っていたから……、婚約を破棄する時しっかりと魔法契約を交わしている。この意味分かるかな?

 勿論契約の内容を知っているか、じゃぁ無い。まぁ、知っててくれた方が早いが。

 私が聞きたいのは、魔法契約がどういうモノかっという事だ」


 そこまで聞いた、ドヤ顔の騎士や周りにいる他の騎士達も、顔を真っ青になっていく。そして、誰も言葉を出せない。


「あぁー、良かった。その様子だと分かっている、と言うか思い出したか?

 それじゃあ、私達は行かせてもらう。


 あぁ、それから国外追放は喜んで受けよう。これで、やっとこの国と縁が切れる。ありがとうソレだけは感謝する」


 固まり動かなくなった騎士達をまったく気にせず、カイトは進んで行く。


 そんな騎士達ができた事は、ただカイト達が去っていくのを見ているしか無かった。それから、騎士達が動ける様になったのも、カイト達が居なくなって大分後の事だった。




 ◇◇◇◇◇



 ぅ?うん?………何か揺れてる?

 それにしても、私あのまま寝ちゃった……。しかも、割とグッスリ。


 あれ?そう言えば、此処は……何処?父様は……?



 辺りをキョロキョロ見ていたリビアンの耳に、押し殺した様な笑い声が聞こえた。

 リビアンがそちらを向くと、笑うのを我慢できなかったカイトが居た。



(え〜〜っ!今何処に笑う所があった?父様……何で笑ってるの?)



 思わずリビアンがムスッとしていると、カイトが今度は声を我慢しないで笑い出す。


「ハハハ!!ーーあぁ、ごめん。リアが表情豊かになって、私を探す様な行動をしていたのが……嬉しくて、ついね?

 だから、怒らないで欲しいな?」


 そう言いながら、とても困った顔をカイトはする。



 父様にそんな顔して言われたら………、許すしかないじゃん!?

 て、言うか!?私まだ表情動いてないと思うんですが?しかも、声も出してない………。今でコレって父様、大丈夫なの?

 イヤ、コレは逆に父様を驚かせるチャンスなのでわ?


 よし!?そうと決まれば!!今こそ、転生の時にチュートリアルで取ったスキルを使う時!?



 リビアンが気合いを入れて、意気揚々と何かを仕様とした時………。


「あ!!そうそう、リアに言っておかないといけない事があって……」


 何故かカイトは満面の笑顔で言ってきた。


「な・ん・と私達、国外追放になったよ!」



 ?え〜〜!?国外追放ーー!?何で?

 イヤ、父様何故にそんな満面の笑顔なの!?そんなにアノ人達が嫌いだったの!?えっ?あれ……?

 あんな人との子供な……私?もしかして……きっ



「リアの事は大切で愛してるから、安心して?」


 そう言いながら、カイトは優しく頭を撫でる。



 あ〜〜、良かっったーー!?父様に嫌われて無くて!!

 う?父様さっき私が考えてる途中で……?



「あぁ、リアが涙目で悲しそうな顔をしたから」


 何でもない様に言ってくるカイトに、納得しかけたリビアンはえっ?イヤ今の……?とマジマジとカイトの顔を見る。


「ハハ!リア、実は……君さっきから声に出ているんだよ?気付いてるかな?」


 涙を浮かべて、優しく穏やかな、そして安堵した表情でカイトは呟く様に言う。


 言われた本人は驚き、しかし次に思ったのが。


「え〜〜?!何処から!?私、何処から声に出してたのーー!?」

「起きてから少し経って、かな?」


「………………………………………っえ?」


 ニッコリとカイトが爽やかに笑う。


「………マジ?」

「うん。マジだよ」


 カイトはニコニコと笑顔だが、リビアンはとても恥ずかしくなっていき顔が真っ赤になった。


「っそ、それは、いくら父様が聞いた…んでも、恥ずかしいよ………」

「大丈夫、可愛かったから。それにしても、本当に………表情豊かになって……っ」

「あっ、父様それは後で、今はおいとこ?

 それより、国外追放?ってどういう事!?」


 リビアンは恥ずかしいのを忘れるために話を変えて

 、さらっと流していた国外追放について聞くことにした。


「あぁ、ソレね……」


 先程までの笑顔が嘘の様にスットーンっと真顔になってしまう。



 えっ!?国外追放の事聞いちゃダメだったの?

 父様お願いだから……、笑顔から急に真顔にならないで!?怖いから……。それに、父様の雰囲気も怖くなってきてる〜〜〜!?



「ごめんね?………怖がらせた、よね………。

 取り敢えず、私は昔この国の王太女殿下の婚約者だったんだけどね?相手が浮気して婚約破棄したんだよ。婚約破棄は、相手の有責がちゃんと証明されてるんだよ。此処までで分からない事はない?」


 リビアンがコクリと頷く。


「ソレなら良かった。それで婚約破棄の時に、国王陛下、王太女殿下、宰相、公爵・侯爵の五人それと、当事者の私で魔法契約をして、

 私を害さない事、私の子供を害さない事、私の私財・権利等を奪わない事。後、色々細かいのが有るけど……、今は省略するね?まぁ、こんな感じの契約してたんだけど………。

 さっき、リアが寝てる時に騎士達が王太女殿下の命令だって、宣言して私財の没収と国外追放を言って来たんだよね〜」


 ハハハとカイトは笑っているが、目は笑ってなく軽蔑仕切っていた。


「まぁ〜騎士達に魔法契約をしている事を思い出してもらって。後、国外追放は喜んで受けるって、言っておいたんだ。私を無理矢理この国に縛り付けてたのが、何の為か……そのうち思い出すのかな……。

 もう少し詳しくは、また今度ね?」



 今のまた、何か黒かったけど……、気にしない!!


 それにしても、父様が……よく見た悪役令嬢系の婚約破棄から追放モノの主人公になってる!?

 しかも、無理矢理この国に縛り付けるって!!魔法契約って……ザマァ系なの!?絶対に契約を破ったら、碌でもない事になるヤツだーー。


 う、ん?それなら、アノ人達と関わらなくって良い?なら、やる事は………。



「………っな、なら!!早く国外に行こーー!?今直ぐーー!!」


 行き成り、興奮したリビアンに驚くカイトだが、直ぐ落ち着きリビアンを宥める。


「うん、そうしたいけど………、まずは旅の支度をしないと。まあ、大体は終わってるし、後は家にある物を持って行くだけ、なんだけどね?」

「?………もしかして……前から準備してた……?」

「勿論!婚約破棄されてからね!?いや〜、こんな可愛い娘と一緒なのは……嬉しい誤算だよね?」


 リビアンに向かってカイトが、あまりにも嬉しそうな顔で言って来るので、リビアンはナニも言えなくなった。



「大丈夫。リアは私が守るから、心配はいらないよ」



 その言葉に安心したリビアンは、自分が少し不安を感じていた事に今気づいた。

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