第44話

少し離れた場所に俺と同じように

桜を眺めている人がいるのが見える



その立ち姿が俺の頭の中の誰かと

重なったように知らない場面が浮かんだ




風で揺れる髪をおさえ遠くを見つめる彼女

その切ない瞳が強烈に俺の胸を締め付けた




湧き上がるこの感情を俺は前にも

経験している気がするのに

思い出せない




ふと彼女の視線がこちらに向いた



彼女の瞳から一筋の涙が流れていく




その瞬間彼女が振り返って去っていってしまった

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