第9話 効率と感情と。

本日3話目の更新です。

7.8話をお先にお楽しみくださいませ。



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「え! い、いいんですか!?」


戦利品である2つの装飾品の中から【天翼のリング】をハルへと渡したところ、なぜか困惑されてしまった。



「でも高価な物なんじゃ… 私でいいんですか?」


「ん? ああ。ハルに合っているからな。」


なるほど、高価そうで遠慮していたのか。

確かに装備した際の効果は大きい物だし、実際に手に入れようとすれば並ではない労力が必要になるだろう。しかしこのパーティに光属性メインはハルしかいない。耐性効果があるならば少しは話が変わるかもしれないが、これは魔法効果にしか効果がない。受け取り手はハル一択なのである。



「え…!? に、似合ってるなんてそんな…。〜♪」


…何か勘違いされているような気もするが喜んでいるようだし大丈夫だろう。



「これはウカが装備しててくれ。」


そしてもう一つの装備、【月海のブレスレット】を、この一連の流れを眺めていたウカへと手渡した。



「…私?」


まさか自分に渡してくるとは思っていなかったのか。目をまんまるにし、ぽかんとこちらを見つめるウカ。



「…いいの?」


「俺が付けるのはなんか違うだろ?」


俺は今回のビルドでも水属性のスキルを取得する予定はなく、仮に取ったとしても保険にひとつまみ程度だろう。攻撃を被弾する予定もないのでこれでは持ち腐れになってしまう。その点ウカには斥候として先陣を切って貰うことが多々あり、初見の敵との接敵率が高いポジションだ、耐性は多く持っておいて損は無いだろう。


それにいくらシンプルといえどアクセサリーの部類だ、普段お洒落とはお世辞にも言えないファッションをしているからか、身に付けるにはどうもハードルが高く感じてしまう。やはりこういったものは女性が身につけてなんぼと言うものではないだろうか。



「いまいちだったか?」


「…んーん。嬉しい。」


どうやら彼女にも喜んでもらえたようで何よりだ。性能が良いからな、もしかしたら水属性スキルを取得するきっかけになるかもしれない。



パーティ全体の強化に繋がったな。とホクホクのトーマと、まさか綺麗なアクセサリーを貰えるとは思っていなかった女性陣2人。彼等の思考はすれ違うばかりである。



▽ ▽ ▽



「見た目の趣味は悪いが質は悪くないぞ。これなら高値で買い取ってやれるわぃ。」


その後、不要となった装備をコーレルさんに確認してもらい、診てもらい終えた物からインベントリへと収納していく。


しかし連携の拙い彼等でもこれだけの質を揃えられるのだ、闇ギルドの依頼は想像しているよりも実入がいいのだろう。

それだけの報酬を用意できる集団だ、容易に攻略できるとは思わない方がいいだろうな。



そうこう考えているうちに散らばっていた装備の全てを片付け終え、再び都市グリンへの道を進み始める。配置は先ほどと少し変わり、ウカには負担をかける形になってしまうが後方のみでなく全体の索敵をお願いしている。


もう脅威と呼べる存在は退けたが、いつ闇ギルドから他の刺客が送られてくるか分からないのだ、相手闇ギルドが強奪に失敗している事を既に知っているのかどうかにもよるが、警戒しないわけにはいかなかった。



しかし大前提これはゲームである、苦行であってはいけないのだ。ウカは当然とばかりに応じてくれているが、負担に変わりはない。休憩を増やしつつ、無理ない範囲で、だな。



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-結果として。

俺達一行は難なく街道を突破した。



あれ以降襲ってきたのは鳥鳥鳥… 刺客はその影すら見せる事のない道中だった。拍子抜けではあったが何もないに越した事はないだろう。


まだ情報が伝わってないのか、それとも今は行動せずに頃合いを見定めているのか…。深追いするほどコーレルさんの運ぶに興味がない説も考えたが、流石にそれはないだろうと脳裏から追い出した。なんにせよ都市に着いたからもう安心。と、まだ気を抜ける場面でない事は確かだ。



街道と都市とを隔てる外壁が見えてくる。

オーレンと比べ少し心許なく見えるその外壁奥には、撃ち降ろせるような高台が建っており、鎧を身に纏った騎士風の男達が周囲を窺っているのがここからでも見ることができた。


また、都市へと入るべく通過する必要のある門の前には、積荷を積んだ馬車や大きな荷物を背負った者など、多くの者が列を成して並んでいた。



-都市グリン


日本エリアにて【王都】【海都】に続き3番目に大きな都市であり、様々な拠点を繋ぐ位置にある為、主に交易によって栄えた都市である。


周辺には飛行型魔物が多く生息しているため、他の街と比べ外壁は薄く、代わりに高台から防衛できるよう物見櫓ものみやぐらのような塔が外壁に沿う様に設置されている。


王都からの国内流行と、海都からの海外流行が交わる為、【流通する物品に今日の後に今日なし】と言われるほど多種多様に出回る商品は移り変わる。



「これはこれは! コーレル様!お疲れ様であります!」


門前は列の後方に着くか否かというところ、門の方からこちらに向かって衛兵らしき男が走ってきたかと思えば、ビシッと敬礼しながらコーレルさんに挨拶をし始めた。



「ああ君か。 ご苦労。」


そう言って特に身分を証明などする事なく、門へと列を横目に衛兵に案内されていくコーレルさん。その突然の出来事に思考が追いつけていないでいると、こっちこっちとコーレルさんに手招きされた為、難しい事は考えずに着いて行くことに。


流石会頭と言うところだろうか、俺達まで顔パスだった。

ほんの先ほどコーレルさんが裏切られている手前、これで良いのかと都市の警備を不安に思うが、元はと言えば冒険者ギルドの紹介した者達の裏切りだ。今回は不運な事故であり、都市側から見れば【コーレルさんは下手なルートから人員を確保しない。】という信頼の上なのかもしれない。



斯くして俺達は、第3の拠点である【都市グリン】へと足を運び入れた。



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自我コーナー




こんばんは。自我です。

唐突な思いつきで始まった1日3話投稿。なんとか形になりました。


また、サポーター様向けに書こうと思っていた第9話の裏話的なものを近況ノートに載せております。誰でも閲覧可能です。ほんとにおまけ程度の文量ですが宜しければ。



ストーリー的には波と波の繋ぎ。盛り上がりに欠けるパートですね。

創作力の見せ場なのでしょう。頑張ります。


明日からは普通の更新頻度に戻ります。

数字に一喜一憂しないよう心を強くしたいものです。


次回もよろしくお願い致します。自分ふぁいお!

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