第8話 別に取らないとは…
本日複数話投稿になります。
7話を読み飛ばされておりましたらお先に読んでいただけますと幸いです。
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こういった裏の仕事をしている割に、めちゃくちゃに目立つ装飾の凝った装備を身につけている所からも、見栄えを重視する性格だと予想できた。そこから装備全ロストは耐えかねないだろうと思っての揺さぶりだったが、彼には刺さりに刺さった様で、先ほどまでの口の固さは何だったのか、ぺらぺらと喋り出した。
「…つまりそういうギルドがあって、そこで依頼を受けた、と。」
「そうだ…。戦闘力もないようなおっさん1人を相手にするだけだから楽な仕事だと聞いていた。そもそも冒険者ギルドでもかなりの数のクエストをこなしていて信用を勝ち取るのも簡単だったんだ。」
これは依頼が先、というよりは信頼が先なんだろうな。闇ギルド内で冒険者ギルドに信用されている者を抜粋して依頼したと考えられる。そうでもなければこのタイミングでの護衛任務に就く事などできないだろう。
「それで? この後はどうする気なんだ?」
「へ? この後って?」
「任務は失敗に終わった訳だろ? この後どう振る舞うのかなって。」
「え? …あっ。ッスー…。」
声にならない空気漏れのような声が聞こえた。まさか自分の置かれている状況を分かっていなかった…のか?
どうも彼等の様子を見るに理解できていなかったのはシュバルツくんだけだったみたいであり、他の面々は考えたくなかった事実を突き付けられ苦い顔半分、お前は理解できてなかったのか…?とシュバルツくんのおつむに呆れる顔半分であった。なぜ彼等はシュバルツくんをリーダーに据えてしまったんだろうか…。
「えと、あの、目的のブツ貰えたりとかっt
「できる訳ないだろ。」
言い終えてもない所でコーレルさんの正論が被せ気味に殴る。そりゃそうだろう、襲っておいて慈悲を貰おうなど甘すぎる。
「そ、それじゃあ俺達どうしたら…。」
現実がようやく追いついて来たのか、先ほどまでの威勢はどこへやら。これから先に待ち受ける
さて、本命は闇ギルドだがどうやら彼等は末席寄りの様、紹介しろと言っても簡単に事は運ばなそうであるし、内部に侵入出来たところで密告され袋叩きに合うだけだ。となると粗方聞きたい事は聞いてしまったし…。
「コーレルさん。何か聞きたい事とか他にあります?」
「大体は君が聞いてくれたから問題ないな。良いもんも見れたし溜飲は下がった、好きにしてくれて構わんよ。」
うんうんと頷きながらこちらに任せてくれるコーレルさん。ハルとウカも特に彼等に用はないらしく、…まぁつまるところ後始末を託された訳で。
「この後大変だと思うけど、AVOの楽しみ方に正解なんてないからさ。これに懲りずに色々試してみたら良いと思うよ。」
「あ、アニキ…!」
目をキラキラと輝かせ、アニキと呼び始めたシュバルツくん。俺は君のアニキになった覚えはないし、そんな顔をされるとこの後しようとしている行為がやり辛くなるからやめて欲しい。
「ま、まぁそういう訳だから! じゃあな!」
「え、ちょ…」
鞘から解き放たれるは陽の光に煌めく刃。
彼等は光となって消えていくのであった。
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『レッドネームの討伐に成功しました。対象の装備を回収しますか? 注意:行動によって相手からの恨みを買う危険性があります。』
彼等にトドメを刺した後、目の前に浮かぶは選択画面を表示したウィンドウ。アプデ前と変わらず序盤である今現在でもPKからは剥げるようだ。
「別に取らないとは言ってないからな。」
そう言いながら迷わずYESと書かれたウィンドウをタップ。
彼等が居た所には、先ほどまで彼等が身に付けていたであろう武器から防具まで。フルセットでドロップしていた。中々に絶景である。
「え、貰っちゃうんですか!?」
「ん。PK甘やかしちゃダメ。」
「要らんもんはわしが買い取ってやろう。」
まさか剥ぐとは思っていなかったのか、驚く声をあげるハルと、それとは対照的に剥いで当然とばかりにドロップした装備をいじり始めるウカと、不用品は買い取ると商売を持ち掛けるコーレルさん。さすが商人だ、ここまで強かでないとその世界では生き残れないのだろう。
「ここで慈悲をあげてしまうと彼等はリスクに気づけずまた同じことをしてしまう。リスクが高いからこそ報酬も美味しい事を分かった上でああいうプレイはするべきなんだ。一度痛い目を見た方が彼等にも良いと思うよ。」
それっぽい事を伝えてなんとか納得してもらった。嘘は言っていないのだが、本心としては「装備は欲しい。」である。逆恨みをした彼等が再びコーレルさんに執着し狙う可能性もあるが、そもそもの話彼は?狙われているし、俺達に至っては名前すら割れていない。今から72時間復帰する事は叶わないし、その時点でグリン、もしかしたらもっと進んでいる可能性もある。
なるほど〜。と感心しているハルと共に、俺達もドロップ品漁りに混じる事に。…と言っても見た感じピンと来るような代物は落ちておらず、「何故これを…?」と思うようなセンスの物が所々に混じっている程度。後はこのレベル帯のプレイヤーならば持っていておかしくないような汎用性の高い装備が大半であった。
「んぅ? …トーマ。」
余りにもな扱いに困る品々の山にガッカリしていると、ウカに声を掛けられる。何かあったのだろうか?
「これ。」
手渡されたのは2つの装飾品。
趣味の悪い…は言い過ぎであるがコテコテの装飾の付いていた装備とは一風変わっており、知識のない者が見ても「良いものなんじゃないか?」と感じられるような代物だった。
1つ目はシンプルなデザインに深海を閉じ込めたような深い青色の宝石が嵌め込まれている腕輪。
2つ目は羽根のような装飾に半透明な宝石が嵌め込まれており、宝石自体が淡い光を帯びている神秘的な指輪だった。
インベントリから詳細を確認してみる。
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月海のブレスレット
深い海を思わせる腕輪。
その水面は満月の夜に主人を待つ。
水属性魔法、水属性耐性に(小)補正。
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月要素がどこにも見当たらない
そしてもう一つ。
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天翼のリング
天より舞い降りる翼を思わせる指輪。
その宝石が宿す光は天使より授かったとか授かっていないとか。
光属性魔法に補正。
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こっちは前者と打って変わって、かなり遠回しな表現だった。なんだ【授かっていないとか】、って。
テキスト記載の効果も強力な物だしこの指輪はこれで完結していそうだ。
天翼は効果の相性もピッタリだしハルに付けてもらおうか。そうなると月海はウカかな、今の所耐性しか恩恵はないものの、
その他の装備達はウカの目にも不要と判断された様で、全てコーレルさん買取となった。
今渡しても運びようがないので一度俺のインベントリ預かりにし、後ほど店舗の方で取引をする予定だ。
「その
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自我コーナー
こんにちは。自我です。
連投企画なんて休日にやればいいのに思い立ったらで始めてしまいました。若干の後悔と、読んでもらえたら嬉しいなの半々です。
さて、18時にももう1話考えてます。
間に合えぇ…。
次回もよろしくお願い致します。
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