第2話 新ストーリールート
「暗殺だって…?」
寝耳に水。
そんな話聞いていないと思ったが、思い返せば昨日、クエストから帰った街中は何処か騒然としていたような気がする。時間ギリギリまで楽しんですぐに解散した為、気を向ける余裕が無かったのだ。
「あぁ、昨日この街にも情報が回ってきたんだが、なんでも3日前の話らしい。事の詳細なんざこんな辺鄙なとこまで回ってこないから分かるわけないが、こんな状況で王城付近に近づくなんざバカでもしないぜ?」
4日前…というと大体イベント2〜3日目あたりの出来事だろう。しかし国王の暗殺なんてビッグイベント、運営がなんのフラグも無しに行うとは思えない。
この早いタイミングで王城付近に辿り着くなど、不眠不休、イベントフル無視だったとすれど流石に難しいだろう。とすると何処かの場所から王城付近へと簡単に辿り着ける新しいルートが開拓されたか、若しくは暗殺に関係するようなフラグが既に行ける他のエリアで発生。国王暗殺を食い止められるフラグが何処か誰かのプレイヤーに立ち、それを遂行できなかったと予想できる。
「俺は半魔族が怪しいと睨んでいる…。」
「何か他にも情報が?」
「いーや? 俺様の直感、て奴だな。」
ガハハと笑い飛ばす衛兵。この世界で種族差別というものは良くないとされてこそいるが、そう簡単に浸透する物ではない。視覚的な感覚というものは何よりも大きいのだ。半魔族という名の通り何処かモンスター的な、この世界に生きる者からすれば魔物的な要素を含むその見た目は、
そういえば今作から半魔族を選択できるようになっていたが、他種族の街だと行動しづらかったり、好感度が初期から低かったりと有るのだろうか? そういった作り込みをしていそうなAVOではあるが、何も知らないプレイヤーがいざ半魔族で開始して冷遇など非難の声が上がりそうだ。
思考が脱線してしまった。結論、この世界において何か不可解な事が起これば半魔族のせい、とは本当に思っていなくとも、冗談半分、ジョークの域で名があがるほどには信用されていない。
「なるほどな、貴重な話ありがとう。でも俺達は王城じゃなくて都市グリンに用事があるんだ。」
この世界に生きている者なら確かに触らぬ神に祟りなし、近付かないが吉だろう。しかし俺達はプレイヤーだ。イベント事には首を突っ込んでなんぼ、というものだろう。
下手に足止めされても困るため適当に言い訳を並べる。
「なぁんだそうだったのか、すまねぇ。ここを通る奴は大体が最終的に城下街を目指す商人や冒険者だったからつい、な。商人の風貌なら情報通だろうから止めなかったんだが、あんたは護衛って訳でもないだろ?」
「俺達も貴重な話が聞けたから助かったよ。」
すまなそうに謝罪した後、笑顔で見送ってくれる衛兵を背に、イェロー街道へと足を進める。
「暗殺、ってかなり物騒なゲームですね…?」
先ほどの衛兵との対話で静かに話を聞いていたハル。VRで遊べるMMORPGと聞いていたところに重そうなストーリーが乗ってくるとは思っていなかったのだろう。
「俺自身暗殺… は初めて聞いたかもな。なんの意味もなくイベントが発生するとは思えないから、誰かが阻止できなかったか… 若しくはこれから何かが起こるか… だな。」
「行くでしょ、?」
「もちろん。何かあるなら首を突っ込むのがゲームってもんだ。」
答えが分かっていながら質問を投げかけ、だよね。と言わんばかりの顔を覗かせるウカ。
といってもここから城下街までは中々の距離、着いた頃には既に事態が収束しているかもしれない。
そうなってしまうと少し肩透かし感はあるが、それはそれで普通に城下街を楽しめば良いというもの。
どう転んでも辞めておく理由など無いのである。
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そんなこんなでイェロー街道。突入である。
-イェロー街道
【オーレンの街】と【都市グリン】を結ぶ街道。
都市グリンの先に国の中心である【王都レインブル】がある為、初期スタート地点である【クリムの街】から王都までを直線で結ぶ【王国ルート】と呼ばれる括りの1つとして有名である。因みにこのAVOの世界に生きる民からは【レインボールート】等と呼ばれることもあり。
その道はかなり開けており、木々や背のそこまで高くない草むら、大小の岩などあれど小型モンスターが大きな群れで奇襲を掛けるには隠れ切れるものではない為、発生する戦闘はかなり小規模。しかしその代わりに空に注意するべき地域とされていた。
「ここからは鳥型モンスターが多く生息しているから、上に注意して行こうな。」
先日の森のように視界が阻まれているという訳ではない為、今回もウカは先導せずに横を進んでいる。実質一本道であるため、警戒すべき箇所は基本前方にしかないのだ。そして大体そういう箇所に居たら分かってしまう。ウカにわざわざ頼むほどではない。
ハルに開けた箇所での注意点を教えるや否や、チュートリアルと言わんばかりに空から3つの影が飛来する。
ダークロウ。
鳥型モンスターの代表格である純正鳥型、影よりも真っ黒なカラスが突撃してきた。
アドバイスの直後であり、空を見上げていたハルも流石に気付けたようで、その登場に焦る事なく戦闘へと突入できた。
「イベント期間でハルもだいぶ成長しただろうし、ダークロウはそこまで厄介じゃない。一人1体で行けるか?」
「了解です! 頑張りますね!」
「ん、ハルならだいじょぶ。」
一人1体で相手取れるように、ハルへとヘイトを向けていそうなダークロウ1体に脇から切り掛かる。ウカも同様に相手に気づかれないように移動、別のダークロウに攻撃を仕掛けているようだ。
無事に分断する事に成功し、それぞれが1体を受け持つ形を作り出した。
俺の受け持ったダークロウはまだピンピンとしている。ヘイトを取るべく軽く当てたとはいえここまで火力が低いのも考え物だ。ヒノカグツチな奴には頑張って貰いたい。
『わがまま言うなや!』なんてツッコミが聞こえたような気もするが、流石に気のせいだろう。余計な思考を捨て集中しよう。
敵は空へと距離を取る。こちらが近接しか持たないと判断しての行動だろう。カラスをモチーフとしているからか他のモンスターに比べ賢い戦いをするようだった。
しかし空に逃げれば安全、と思われるのも癪だな。さっさと蹴りをつけよう。
先日の街巡りがここで功を奏する。
腰のポーチからピンポン玉ほどの大きさのガラス玉を取り出す。アプデ新要素【魔法玉(氷)】だ。
-魔法玉
その名から察せる通り、1種の魔法を内包したガラス玉。ガラス内の色に応じて魔法の威力が変動する為、濃い色の魔法玉はそれだけ高価で取り扱われる。
魔法玉をダークロウへ向けて投擲。
んなもん当たんねぇよ。とカァカァ笑っている奴は、煽るようにすんでのところで躱そうとした。
侮りすぎだ。魔法玉の発動タイミングは投擲したプレイヤーの手にあり、効果圏内に入ったダークロウ目掛けて、割れた玉の内部から冷気が襲う。
羽の制御を奪われたダークロウは大地に落ちる。こうなって仕舞えば煮るなり焼くなり。如何様にでも調理できるだろう。
場面は限られるし、当てられるかどうかがかなり左右するだろうが、新アイテムも悪くないな。とダークロウにトドメを刺す。
周辺を伺えば少し手こずったのは近距離オンリーであった俺だけだったみたいであり、遠距離の手札があるハルは言わずもがな。ウカも投擲系スキルがある為余裕だったみたいだ。
早く遠距離の選択肢が欲しいものである。
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自我コーナー
こんにちは。自我です。
第3章が始まってすぐなので手がぐんぐん動きます、が。妨げてくるものがひとつ。
新しいの書きたい欲が邪魔して来ます。
「おっ、おもろそうかな?」と思いつき、2000字ほど書き、「…いやおもんねぇな。」を繰り返しています。無駄な行為すぎる。
短編物として出せたらまだいいのですが、どれもこれも長編モノなんか?ってくらいには長くなりそうな導入で世に出せません。
思いつくけど続かないタイプなようです。
次回もよろしくお願い致します。
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