第3章 新・王国ルート編

第1話 解散

『後ろに次の組が控えてるんで〜、そろそろ帰ってもらっても良いですか〜?』


長くなったのはこちらのせいではないだろうとツッコミを入れる間もなく、視界は眩い光に包まれる。

俺達は再び女神の手によって元いた場所へと送還されるのであった。



「戻ってきちゃいました…ね?」


ようやく現実を理解できたのか、久しぶりに口を開くアメさん。…いや、ずっと口はぽかんと開いていたから声を聴くのが久しぶりなだけか。



「結局報酬は後日… 本当になんの顔合わせだったんだ…?」


「あの運営の事だし深い意味も無さそうじゃないッスか? この演出カッケー!みたいな。」


とんでもない事を言い放つダーシュだが、否定できないほどに今までの経緯やらかしが運営にあるのも事実。

…案外的を射ているかもしれない。



「考えても無駄。 気にしない。」


シンプルなウカの一声にそれもそうだと一同納得。

今日のメインイベントが済んでしまった為、次は今後の動きを話し合う事となった。



アメさんはいちプレイヤーである前に配信者だ。ずっとAVO同じゲームを擦る訳にも行かない。視聴者を飽きさせてしまうだろう。


AVO一本集中で進めようとしているこちらとどうしたって進みに乖離ができてしまう。


今後の事を考えるとここでパーティの解散をするべきだろう。


その事は当の本人であるアメさんが1番理解しているようで、彼女から話を切り出された。



「今後も組ませて欲しいんです。けどきっと足を引っ張りますから…。 またご一緒させていただく形でお願いできませんか…?」


「アメさん達とはここでバイバイなんですか…? この3日間とっても楽しかった分余計に寂しいです…。」


解散するとは考えてもいなかったのか、しょんもり落ち込んでしまうハル。



「またきっと組む時があるさ。連絡だって取れないわけじゃない。」


そう、既にフレンド登録済みだし連絡だって簡単に取れる。

また集まるのが難しい訳ではないのだ。



「せっかく集まったのにここで解散、てのも寂しいですし…、 最後にクエストとか一緒に行きませんか?」


そんな中、どこか寂しそうな表情をのぞかせつつも提案するアメさん。

気持ちは分かるし言っている事も尤もだ。



「もちろん、俺も誘おうと思ってたよ。ただ…。」


「ただ…?」


アメさんの表情が、不安により一層翳りを増す。



「武器だけ買わせてもらっても良いかな?」


俺は獲物を失っているのである。



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その後、ウカの判断で選んだ武具屋へと全員で突入。間に合わせの手頃な獲物を1本。と思ったが、今後の事を考えるとまた獲物を失う機会があるかもしれない。サブウェポンとして考えた方がいいだろうと、しっかりと品定めする事になった。


俺の他にも装備を買い足したり、途中目についたアイテムを買ったり、あっちも行ってみたいこっちも見てみたいと目が移り、街散策の様な形となってしまった。目当てであった獲物の他にアイテムの補充ができたり、楽しみきれていなかった街を巡れたため大変満足、メンバーも楽しそうだ。



街散策の末に本来の目的地であった冒険者ギルドへと辿り着く。


ふぁいお!の声に背中を押され、最後のクエストへと雑談しながら向かっていく。



出会いの話。


亀の話。


喫茶店の話。


団長の話。


マールさんの話。


ゴブリンキングの話。


俺がいなかった日の話。



たったの3日。

それでもとても濃密な、とても3日で収まったとは思えない程の思い出に、話は途切れることもなく。



気づいた頃にはクエストの達成報告を済ませ、遂にその時が来てしまう。


パーティ解散の時間だ。



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「ダーシュは今後どうするんだ?」


「俺は別にストーリーに興味ないッスから、このままナイト続けるッスよ!」


アプデ前もふらふらと、呼べば参戦する傭兵のような存在だった為納得の言葉だった。



「ありがとうございました! ほんっとうに楽しかったです! また一緒に遊びましょうね〜!」


ぶんぶんと大きく手を振る笑顔のアメさんと、



「あざしたっ! また一緒にクエストおなしゃす!!!」


昔と変わらない、どこまでも元気なダーシュを見送り、それぞれログアウト、または街の人混みの中へと消えていく。



賑やかで楽しいイベント期間だった。



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そして翌日。



「おはようございます〜…ですかね?」


「お疲れ様、ハル。」


「ん、 やほ。」


「ウカもよろしくな。」


再集合した元のメンバー。

ここ最近5人で動いていたからか、気持ち寂しいように感じてしまうが、今日からまた再び3人パーティだ。



「イベントも終わってすぐだし、しばらくは普通にAVOを楽しもうと思うんだけどどうかな。」


「いいと思いますよ! 王国ルート…でしたっけ! お城見てみたいです!」


「ん、 だいじょぶ。」


元々こうしようと決まっていた方針であった為、特に異論が出ることも無く。

さぁ王国を目指そうかと、これまた元の旅路を進める。



まずは王国に行き着くまでに経由する必要がある箇所である【都市グリン】に向かうべく、【イェロー街道】を攻略せんと門を通ろうというその時、門の衛兵に呼び止められた。



「まさか王国に向かうのか? 今は辞めておいた方が良いと思うけどなぁ?」


「というと?」


思ってもない台詞に思わず聞き返してしまう。

ここで足止めを喰らうなんて話は聞いたことがない。アプデを経て新しいフラグでもできたのだろうか…?



「なんだよ知らないのか? 今国王が暗殺されたとかなんとかで、そりゃあ城下町中大パニックよ。」


どうやら俺の知っている王国ルートは、既に崩壊しているようだった。



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自我コーナー




こんにちは。自我です。


先日近況ノートでも触れておりますが、2日前夜、50万PVを達成いたしました。ご愛読いただいております皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。

次回目標は100万PVでしょうか。それまで毎日投稿できている事を祈ります。


さて、本編第3章メインシナリオ編へと突入しました。

楽しんでいただけますと幸いです。


次回もよろしくお願い致します。

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