第46話 懐古と警告
『あかんわ。あまりにもな面子過ぎて喋ってもうた…。』
思いっきりコテコテな関西弁でツッコんだ後、我に帰る火の悪魔。こう言ってはなんだが余りにも威厳を感じるには無理のある状況だ。
『カグちゃんたら…。』
『だからカグちゃんやめぇや!何度言うたら分かんねん!?』
再度いつの間にか何処かから現れた
そう、目の前に現れたのはエリアボスの1柱。ここAVO内では火と鍛治を司る神であるヒノカグツチだった。
「えーっと…? 先輩お知り合いですか…? いやでもそんな訳…」
正解に辿り着くも、いやいやそんな訳ないだろと微かに聞こえる小声で自問自答を繰り返している事が見て分かるハルと、
「………?」
鳩が豆鉄砲を食ったような、まるで背景に広大な宇宙が広がっているかのような… 所謂宇宙猫化しているアメさん。
事情を知っている転生組はというと、いつも通り…のように見えて若干ジト目になっている目を向けるウカと、何やってんだと言わんばかりの表情で2柱を呆れ眺めるダーシュ。ダーシュにこんな表情させるって相当だぞ…?
様子を見るも話はまだまだ先に進みそうにない。まさかこんな素人漫才を昨日もやっていてあんなに時間がかかったのではなかろうか…?
浮上してきた疑問を投げかけようにも、2柱の漫才はまだまだ終わらなそうだ。
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暫くして。
「…なぁ、いつまでやってるんだ?」
一向に終わりそうにないので横槍を入れる事にした。このままでは日が変わってしまう。誇張でもなく本当に。
『ほら、カグちゃんが変な事言い続けるから怒られちゃったじゃないですか〜。』
さも自分は関与してないとばかりに、悪びれる事なく言い放つクレアトール。
『誰のせいやねんな…。 もぅこの場はカグちゃんでええから今後はマジで頼むで?』
どこか疲れ切ったような情けない声を上げつつも、流石に話を進めないとまずいと思ったのか、気に食わない呼ばれ方を一度棚に置く
『ほな話を進めんで。待たせて悪いなぁお二人さん?』
お二人、のところでアメさんとハルの2人を見やるカグちゃん。
「え、えと、大丈夫…です?」
「………???」
いきなり話を振られたからか、状況がより飲み込めなくなったハル。宇宙猫、もとい宇宙アメさんは未だに宇宙旅行から帰ってきていないようだ。
「なんで2人なんだ、俺達もだいぶ待ったぞ…?」
『細かい事を気にする男性は嫌われますよ〜?』
『ほんまやで? 気にしすぎや気にしすぎ!』
苦言を投げるも、さっきまでの争いは本当になんだったんだというくらいの結束力で躱される。
『話が長なってるからさっさと進めよか? ほな今日の本題や。』
もう今更取り繕う
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『まずは第3位おめでとぉさん。…さっきも言うたけどもうちょい手加減しても良かったんとちゃうか?』
「手を抜いたって仕方ないだろ?」
『せやけどなんちゅう面子してんねん…。あかんわ。また脱線してまう。続けんで?』
『ランキング報酬としてチームメンバーそれぞれに鍛治神印の装備を1本!プレゼントや。これはAIくんが勝手に決めてまうからリクエストは受けられへん。そこだけ分かってな?』
渡りに船。棚からぼたもち。
ちょうど新調しようというところに武器のプレゼント、それもイベント仕様の特別製が手に入ると来た。かなりタイミングが良いと言えるだろう。
問題はAIが決めるという所だが…、ここまで刀1本でやってきているのだ、その辺も考慮してきっと刀が手に入るはずだ。
相当ピーキーな性能でない限り、街で新しく獲物を探すよりかは良い方向に転ぶ事だろう。
装備が1本、という話を聞いて他の面々も報酬に納得しているようだ。実際この3日間は格上相手との戦闘が多かった。自分の装備に満足できていなかったはずだ。
『わざわざウチが1つ1つ手作業で作るほんまもんの一点もんや。大切に扱ってや?』
俺に来た討伐依頼同様、カグちゃんにも装備の制作依頼が来ているのかもしれない。だいぶ地味…というか差を感じるかもしれないが、アプデ前でも鍛治をしていた一線級のプレイヤーだ。各プレイヤーに合わせた依頼が来ているのかもしれない。
アプデの入った現在、転生後でも鍛治業を続けているかは分からないが、この3年で培ってきた技術はそう易々と腐るものではないだろう。
期待ができるというものだ。
『今回はそのお知らせの為だけに顔合わせした、って話や。装備は作り次第メッセで送ったるから楽しみにしといてや? …後日ならなんで呼んだんやろな?』
『こちらにはこちらの処理ってものがあるんですよ〜? あとあまりそうやって世界観ぶち壊す言い方やめてくださいね〜?』
『誰のせいや!』
また始まりそうなのでさっさと退散した方が良さそうだ。
どうせこれだけの縁… 言い換えれば運命的な何かで巡り合っているのだ、どうせカグちゃんの中身とも顔を合わせることがあるだろう。
消化試合みたくなってしまった邂逅イベントを経て、そろそろお開きという所。
『あーそやそや… これだけは言っとかんとな。』
「…?」
『1位の奴らには気ぃつけや? トーマ。』
「…どういう意味だ?」
そう言葉を残し、俺の返事を待つ事なくマグマの壁へと消えていくヒノカグツチ。
詳細な話を聞こうにも、もうそこに神はいない。
こうして俺達の第1回エリアイベントは、何やら不穏な言葉を最後に、幕を閉じるのであった。
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