第45話 火口で邂逅。ついでに開口

早速運営から送られてきた、報酬案内メールを確認してみる。



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差出人 : 女神クレアトール

件名 : 日本エリアイベント報酬案内


こんにちは〜 運営女神ことクレアトールです〜


この度は第1回エリアイベントへのご参加ありがとうございます〜。楽しんでいただけましたか〜?

上位陣の獲得ポイントが予想されていた数値の2倍以上でこちらはとても驚いてますよ〜


さてさて前置きはこの辺にして〜

あなたのパーティは〜【第3位】!

大健闘ですね〜 素晴らしいです〜


私が言うのもなんですけど〜、 睡眠時間も大切にしないとだめですよ〜?



こほんこほん〜

ここからはお待ちかね〜、ランキング報酬のお話です〜


【第3位】の報酬は〜


【とある場所に繋がるワープスクロール】です〜

ぱちぱち〜


どこに繋がっているのかって?

それを教えちゃったらつまらなくないですか〜?



他のスクロール獲得者と時間帯が被らないように日時を調整するので〜、この後すぐの時間から3日以内を目安にご希望の日時を記載してご返信くださいね〜


なお日時は早い者勝ちです〜

こちらでスケジュールを組んじゃうのでお早めに〜


ではでは〜 運営女神クレアトールでした〜


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読み終えた後、全員で情報を共有するも、当然の事ながら全員同じ順位であるために、記載の内容に違いはなさそうだった。



-ワープスクロール

アプデ前よりそのアイテムは存在する。

効果は単純明快。指定された地点へと瞬時に移動できる使い切りのワープアイテムだ。

大抵街への帰還用であったり、クエスト関係の特設エリアへの移動であったりに用いられ、とても便利な一品であり、その需要は計り知れない。


しかし、このアイテムはあまり使われる事はなかった。

-高価すぎたのだ。


俺自身、資金の使い道が特になくなった終盤に、エンドコンテンツであった終焉龍討伐の為、生息地と補給拠点を行き来するべくウカから比較的安く買わせてもらった程度であり、「そこまで金かけるんなら自分で行くわ。」と言いたくなるほどに絶妙な価格であったアイテムである。


今回、移動先を伏せられかつ、時間指定もあるという事は街への帰還などというありふれた効果のスクロールではなく、イベント特設エリアへの移動アイテムと見て間違いないだろう。

というかそうでもなければ報酬としてかなり弱い。またサ終手前まで追い込まれかねない悪手だろう。



さて、そうなると次はメールに記載の通り時間を決めなくてはいけない。この後すぐから対応可能とは運営も中々に思い切っている。もう既にスクロールを受け取りイベント報酬を受け取っているプレイヤーもいるのではないだろうか。



「全員読み終えたかな、都合の良い時間とかある?」


「俺は日中以外ならいつでも良いっスよ!」


「私は先輩に合わせられると思います!」


「ん、トーマに任せる。」


「配信の予定とかもあるので私は難しいタイミングがあるかもです…。」


基本的に夕方以降、アメさんの予定次第となりそうだ。



「アメさんのこの後の予定は?」


「大体1時間後に配信が控えてます、ごめんなさいこうなるなら空けておけば良かったですね…。」


「こんなの予想できないから気にしなくて大丈夫。とりあえず所要時間も書いてないからなぁ…。」



このままでは予定を立てようにも立てられない。一度クレアトールに連絡を取ってみようか。



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結果として、後日再集合になった。



なんでも既に1組がスクロールを使用したらしく、それも時間が予定よりかかりそうとの事。

それなら1時間以内に事が終わる訳もないだろうと、日を改める事になったのだ。


明日のまたこの時間であれば、アメさんはフリー、クレアトールも大丈夫との話。

他の面々もその時間で了承した為、一度解散し翌日にまた集合、という運びとなった。



申し訳なさそうに謝りながら去るアメさんを見送り、時間が空く4人。


折角4人も揃っていて時間があるならと、火山亀と戦った地でもある【オーレンの平原】でひたすらモンスターを狩り続けるクエストを受注。


飽きが来るまではとりあえずこのクエストにしようかとの話だったが、片手間に雑談を交わしていると気付いた頃には良い時間。また明日集まろうとその日を終えるのであった。



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翌日定刻。


既に運営から送られてきていたワープスクロールを全員で使用、俺達はイベント特設エリアへとやって来ていた。



「…!? あっついですね!?」


ハルが思わず悲鳴をあげる。アメさんも似たような事を考えていそうで顔を顰めており、ウカに至っては溶けてしまうんじゃないかというような顔をしていた。

かくいう俺も同じ言葉が出ていたかもしれない。

そんな中でダーシュだけはいつも通りと涼しい顔をしている。


熱いではなく暑い。

辺りはごつごつと岩肌であり、熱気に包まれている。上を見れば雲がかなり近くに見えるため、高所なのだろう。


俺達の立つ地面は斜面がかっており、登った少し先の方に見えるは大きな大きな穴。いや、が熱波の元を覗かせていた。


ここまでの要素が揃えば見覚えがなくとも大体の予想は付くだろう。マップを確認し予想は確信へと変わる。



ここは日本エリア、人間族エリアとドワーフ族エリアの間にそびえる大火山。

-ウルカノス火山の火口付近だ。



『チームトーマの皆さん〜 お越しいただきありがとうございます〜。』


唐突に視界に入ってきた異様な光景に、周囲を警戒していたにも関わらず、誰にも気取けとられる事なく現れた運営女神クレアトール



『ここでぐだぐだしていても時間が掛かってしまうだけなので!火口にダイブしちゃってくださいね〜。』


突然不可視の謎の力に突き飛ばされる。

俺達は火口へと身を投げる事となった。



「はい!? ちょ、えぇえぇえぇえぇえぇ!?」


「あついあついあつい!!!何してるんですかあの神様!? 取れ高ですけどぉぉぉぉぉおお!」


「むぅ。許せない〜… ダメ溶けr…」


「センパイ! なんかアトラクションみたいで楽しいっスね!?」



眼下に広がるはぐつぐつぽこぽこと煮え沸るマグマ。俺達は自然落下している為どんどんと近づいてくる。流石に恐怖が勝ち、自然と目を瞑ってしまう。


なんで報酬で1デス貰わないといけないんだ、何が報酬だ、と心の中で悪態を吐きながらマグマに呑み込まれるのを待つも、強制ログアウトは訪れない。


「…?」


恐る恐る目を開ける。


そこは空洞。

と言っても周囲はマグマに囲まれ、何故か空間ができているだけに過ぎない。


足場はない。

なぜか宙に浮いている。皆も無事な様で同様に宙を浮いていた。



そして目の前には見覚えのある姿。

なるほどそう来たか運営陣。



-全身炎。

そう形容するしかない風貌の

頭と見られる箇所には山羊が待つそれの様な、弧を描く様に巻く角が2本、生えている。


一言で頑張って形容するなら【炎の悪魔】。



『ナ…』


…な?


悪魔は口を開く。

何処か怒りをみせるような、そんな震えた様な声。





『なんッッッッであんたらが組んでんねん! もーちょい若手に道譲ったれや!!!』



開口一番、ツッコまれた。

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