第41話 イベント閉幕
暴れ散らかして翌日。
今日は月曜日。昨日の今日でイベントの結果がどうなったのかとてもとてもそれはとても気になるところではあるが、まずは
そもそもの話、イベント最終日はランキングが伏せられ、抜いた抜かされたがプレイヤーからは分からない為、昨日最後まで頑張っていたプレイヤーにすら、結果がどうなったかは分からないのである。
因みに順位を知る方法は結果発表である閉会イベントを待つしかないが、昨日の仲間達の頑張りを知る方法は存在する。
-アメさんの配信を見る事だ。
先日彼女自身に聞いた話であるが、最大手動画投稿プラットフォームにてアメさんの配信は基本的に見返せるらしい。そこを覗けば昨日、俺がいなかった間の動きを見ることはできるだろう。
…しかし、しかしだ。
ここで見てしまうのも少し興醒めというか、何も知らない状況で全員と顔を合わせ、結果発表を共に待つのが一興、というものではないだろうか?
それに見たところで結果が変わるわけではない。下手に見てしまって結果発表までやきもきしてしまう、というのも気持ちの良いものではないだろう。
座して待て。という事だ。
気持ちをリセット、一度何も気にせず、日常生活を送るべきだろう。
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-結果として何も気にせず、は無理だった。
仕事をするべく、PCを立ち上げるも10分に1回は検索バーに手が伸びる。
いやいや気にしないようにするんだろ、と自制。それをひたすら繰り返した。
普段以上に時間が掛かりつつも、なんとか今日のうちに進めたいと考えていた範囲を終える。しかしまだまだ結果発表である閉幕の21時まではかなり時間があった。
何をするにも気が逸れる。
TVをつけてみても、やれ教育番組だの、やれ一人暮らし男性が意識不明の植物状態だーなんて内容のニュース番組だの、興味を惹かれるようなものは放映されていない。
こんなにAVOのイベント結果が気になった事などあっただろうか?と思ったが、そもそもの話ここまで人が集まることが無かったからな。人が増えれば競争率も上がる。アプデ前の出来レースに慣れていたからか今回のイベントがより気になってしまうのだろう。
余計に気になってしまう気もするが、もうログインしてしまおうか? どうせ手持ち無沙汰なのだ。まだAVOの世界を歩いていた方が気も落ち着く‥かもしれない。
なんとも強引な理由…もとい言い訳かもしれないが、何も手につかないのだ。たまにはこういう日があってもいいだろう、なんて自分にさらに言い訳を重ね、ヘッドギアを持ち出すのであった。
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前回のログアウト地点である【オーレンの街】に戻って来る。
そういえば前回の戦いに失敗していたら、もしかすれば奴らに蹂躙されていたかもしれない。アプデ後にこんなにも早く街消滅イベントが発生していた事に、どこか世界の進みが加速している様な、まだ運営側に引き込まれた以外の、何か運営の企みが水面下で進んでいる様な気がしてしまう。良くも悪くもアプデ前と同じと思っていては置いていかれそうだ。
この分なら既に潰されている街があってもおかしくはないだろう。辿ろうとしている王国ルートも壊れているかもしれないし、既に別ルートに片足を突っ込んでいる気がしなくもないが… どう転んでも目新しい経験になるだろう。
皆とは結果発表時間である21時の少し前にいつもの場所となりつつある喫茶店【小鳥の止まり木】に集合、と話はついている。
それまでソロでもできそうなクエストでも1つ遊んでおこうかな、と冒険者ギルドへと向かう事にした所。
「んぅ? トーマ?」
聞き馴染みのある声がする。
「ウカ?だいぶ早いな?」
最近一緒にいる事が増えた元道具屋。いつでも居るような気がしてくる猫獣人。
「何してたんだ?」
「ん、 街見てた。 トーマは?」
「少し時間まであるしクエストでもしようかな、ってな。」
「ついてって良い?」
「もちろん、 一緒に行こうか。」
奇しくも、なんだかんだでアプデ前は実現しなかったウカとの2人だけでの初のクエストとなるのであった。
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「こんちはー! ようこそー!冒険者ギルド オーレン支部へー♪」
過去に類を見ないほど底抜けに元気な挨拶で迎えられる。…何処かで見た事あるような顔付きだ。NPCだしそういう事もあるか?
「今日はどういった御用件で!」
「ああいや、クエストを受けに受注ボードを見にきまして…。」
入口を通ってすぐに挨拶のみならず、用件を聞いてくる、など今まで遭遇した事のない事象に面食らってしまう。すごい勢いだな…?
「そーだったんすねー! ではでは頑張ってきてくださいー! ふぁいおー♪」
そう言われて思い出す。クリムの街の受付嬢に髪型こそ違えどそっくりな顔付きをしていた。もしかして姉妹設定などあるのだろうか…?
「もしかしてクリムの街にご姉妹とかいたり…?」
「おー! よく分かったっすねー! お姉ちゃんが冒険者ギルドで働いてますよー!」
合っているようだ。どこに力を入れているんだろう…。
製作陣の力の入れどころが気になりつつも、本来の目的であったクエストボードへと向かう。
「下手に手間取るようなクエストを選んでも集合時刻に間に合わなくなるかもしれないし、比較的シンプルなものにしようか。」
「ん。トーマに任せる。」
という運びで、近場のフィールドに生息するモンスターを、ノルマもなく、ただ討伐すればするだけ報酬の上がるシンプルなクエストを選択。
難易度もかなり緩めを選んだ為、索敵を頼まずに雑談でもしながらのんびりしよう。
「昨日はどうだったんだ?」
「んー。やれる事はやった、よ?」
「参加できなくて悪いな。」
「んーん、 トーマもお疲れ様。どーだった?」
「暴れ回れて楽しかったよ。」
そんな感じの、昔と変わらない距離感の雑談を続けながら、時間まで2人で狩りを続けるのであった。
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