第40話 大怪獣バトル

side バイト


否応なしに視界に入ってくる警告ウィンドウに目を通すかどうかというところ、空から後光を伴いが舞い降りてくる。それは余りにも異質で、かといってどこか神々しく。自身に危機が迫っている中、あの単眼の巨人から注意を外すなんて普通に考えたら馬鹿のやる事だと言われてしまうだろうが、それでも。それでもそのは俺の視線を離さなかった。


目を凝らす。その姿には見覚えがあった。以前スレッドに載っていたスクショでしっかりと見たし、なんなら自身のこの目で見た。日本エリアを纏めるボスなんじゃないか、と考察されていたワールドボス、-ツクヨミ。先ほど視界に入った警告ウィンドウからしても本人 …本神か? で間違い無いだろう。



神が地に降り立つ。それと同時に後光はその主張を少し控えるも、威圧感というのだろうか。近寄ってはいけない、と本能で感じられた。


神は想像していた姿と違い、巨人と比較してかなり小さく感じる。俺達プレイヤーと同じくらいのサイズではないだろうか?



神は巨人と向き合う。新たな相手を視界に捉え、威圧するというよりは何処か喜んでいるように咆哮する巨人。あいつにはあの威圧感が分からないのだろうか。


思わずその咆哮に気を取られ、神から少しだけ意識を離してしまう。また視線を戻そうと首を少し振ろうとした時にそれは起こった。



ドッパァァァァァァァァン!



-爆発音。

ちょうど向こうとしていた方向から発生するその音に、何が起こったのかと思考が一瞬フリーズする。その答えはすぐ視界に入るも、頭はを理解してくれなかった。


なにかが爆速で視界を横切る。速すぎて何が動いていたのかまるで目で追えない。その動きにかなり遅れて、神がさっきまで居た付近の広範囲の大地が抉れ、土や岩が宙を舞い、それに巻き込まれたプレイヤーもまた、宙を舞っていた。



爆発によって生じた衝撃が風となり、舞い上がったつぶてを伴いこちらに襲いかかる。かなり強い風圧に、目線を外してはいけないと理解していつつも俺は目を瞑らざるを得ない。

混じる礫に体力を削られはじめ、どうせ目線を外すならと、すぐに先ほどまで隠れていた岩陰に身を隠した。



ガガガガガガガガッ



身を隠す岩が礫によって削られる。岩によって上に弾かれた礫が雨となってパラパラと俺に降り注ぐ。…なんの冗談だ。俺は何に巻き込まれているんだ。と、理解の追いつかない俺の頭は混乱に叩き落とされた。


しかし、この世界は状況を理解できてない俺を放っておいてはくれない。



ズガガガガガガガッ



何かが地面を抉っているような音が聞こえる。その音に遅れて大地が揺れる。岩陰に四つん這いで隠れていたお陰か、その揺れでバランスを崩す事は無かったものの、そのの正体が分からない。



少しして礫が止む。

恐る恐る様子を見る為岩陰から顔を出す。怖いが何が起きているのか理解しなくてはいけない。理解できない以上の恐怖は存在しない。俺は何が起こったのかを理解しようとその光景を目に入れる。



結果として俺の脳はその光景を理解した。いや、光景だけは理解できた、の方が正しいだろうか。


神から巨人に向けて視界をちょうど横切るように大地に一直線。その線は巨人で止まるということを知らず、見切れる所まで続いているように見える。

その線は抉れるというよりは刃物が走ったような鋭利に切れており、また線上にいる巨人は片腕を失っていた。


その当人である巨人も何が起きたのか理解できていなかったようで、少し遅れて腕を切り落とされた事実と痛みを理解したのか、その痛みと怒りによって再度咆哮する。



巨人と敵対している、という事はプレイヤーの味方か…?と一瞬期待するも、先ほど宙へと舞い上げられていた同胞を思い出しその湧き上がった期待をゴミ箱へと投げ入れる。敵の敵は味方などでは無い、これもまた敵なのだ。


しかし何をしたのかは皆目見当つかないがあれだけの破壊力だ、巨人の命もそう長くは無いだろう。神はプレイヤーに見向きもしていないのでこのまま息を殺しておけば助かるかもしれない。仲間達も難を逃れていてくれたら良いけど、なんて思考に余裕が出てきた。



良かった〜…! カミサマ様々だなぁ!なんつって!w


罰当たりな考えをしたからか、俗に云うフラグを立ててしまったのだろうか。





先ほどまで暴れていたのは子供だったのだろうか。手負の巨人に比べさらにサイズの大きな単眼の巨人が空から


ドパンッ!ドパンッ!と大地を震わせ、足元の生命体を潰していく。



…俺の足元にも、影ができる。



奇跡を願った俺が、助かったと油断した俺が悪かったのだろうか。



そこで俺の意識は途切れる。

気づいた時にはゲームとの接続は切れ、目の前にリスポーンまでの時間が表示されているのだった。



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side ツクヨミ



想像していたより手応えのない相手に、本当にこれだけで1日欲しいと言ってきたのか? なんて運営に文句のひとつでも言おうかと考えていたら空から追加が降ってきました。こっちが本命かい。


次々と降ってくる大小バリエーション豊かな巨人達。…まぁ小といっても先ほどの巨人が小相当であり、降ってきたのは20〜30メートル、といったところだろうか。



足を止めていても討伐対象が増えていくだけなので行動に移る。周辺への影響を気にするのが馬鹿らしくなるほどに、降ってきた巨人達によって大地は荒らされていた。今更気を病む必要など何処にあろうか。

巻き込まれたプレイヤーも、もうどうする事もできないだろう。諦めて欲しい。



行動は至ってシンプル。


一歩。

大地を抉り地を駆ける。


一閃。

大地を切り裂き巨人を討つ。



そうしてただひたすらに殺戮を繰り広げ、もはや原型を思い出せないほどに荒らされたサバン平野。

その地に残ったのはただ1柱。




巨人の雨は降り止んだ。

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