第25話 よく物語に出てくる貴族のイメージのような。

何故か心の距離が縮まった… いや、心の壁が取り払われた… いやいや、ぶっ壊してきたマールさんとの会話に花を咲かせていると、メッセージ通知が入った。


ちょっとすいません。と内容を確認してみると、差出人はハル。なんでも俺以外のチームメンバー全員が集合時刻よりも早くログインしていたらしく、偶々遭遇しもう既に集まっているとのこと。


フレンド欄を見てみればもう俺はオンライン表記になっていた訳で…と、その流れで連絡をしてみようと事が運んだらしかった。


集合時刻ではないが集まっているのならば前倒しにしても構わないだろうと考え、現在地の座標を添付。昨日の特殊モンスターについて話が進んだ事も添えてメッセージを返しておいた。


そう時間が経たないうちにすぐ行くとの連絡をもらったのでマールさんにもうじき仲間が来ると伝えると、それならばと今回この戦場を仕切っている人との顔つなぎの場を設けてくれる事になった。



マールさんには感謝しかないなぁ。と難なく話が進んでいるこの流れを作っている本人(本NPC?)に心の中でお礼を言いながら、メンバーの集合を案内してもらった天幕の中で待つ。



順調順調!

サクサク進みすぎて後が怖いな〜


トーマがご機嫌になるのも仕方なかった。



…なんて軽い気持ちでいたのが悪かったのだろうか、とんとん拍子で話が進んだ後には大体何かに躓く物である。



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暫くしてメンバーと合流。

既に話が通っていたのか、俺と違って無事に通してもらえたようで、難なく天幕で合流。

挨拶もそこそこに、昨日の今日で聞きたい話や共有したい話がいくつか出てきていたので、まずはとダーシュに話しかけようとしていると、アポイントメントを取り終えたのか、騎士を控えに連れたマールさんがそこに合流。この時点でダーシュの興味がマールさんに全部吸われてしまった。


さておき顔合わせの前にここのメンバーだけで自己紹介しておくべきだろう、と各自自己紹介を済ませたタイミングでメインの顔合わせの時間となってしまい、ダーシュにランキングの件について尋ねることが後回しになってしまった。後で時間がある時に聞くべきだろう。



顔合わせのために天幕を移動。移動中に話してもらったが、移動先で待っているのはこの戦場を取り仕切る責任者、王国騎士団第3隊の団長だという。


そんな大物とよく顔合わせを許してもらえたな、もしかしたら部下との距離が近いフレンドリーな人なのかもな、なんて軽く考えマールさんの話を聞いていた。


この時、マールさんのなんとも言えない微妙な表情に察せていれば少しはこの後待ち構える事態に対応できたのかもしれない。



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「信用ならんなァ。君達は後方! 雑魚の掃討にでも当たれば良いだろう。まぁそこまで後方に雑魚が抜けるようなことがあれば、だがなぁ?」


所は天幕。挨拶も名乗りもしないうちに言葉が飛んでくる。


周りの騎士と比べ装飾が多く派手派手な鎧に身を包み、いかにも上司です。と言わんばかりのご立派な髭を蓄えたガタイの良いおっさん、いや失礼。ゴードン団長に後方にでもいて漏れた雑魚でも掃除してろ、と皮肉混じりに伝えられた。要するに外部の助力は不要。もしくは教団関係者であるマールさんの推薦が気に食わないのだろう。



「それは私の推薦に不満があると仰りたいので?」


その皮肉が分からないほど純粋ではないマールさんにも当然意図は伝わっており、語気に良い気をしていないだろう雰囲気を醸し出しつつも、王国と聖国の関係もあるだろう、なんとか表情に出ないよう押さえ込んでいた。



「い〜やいやまさか! クレア教団のホープ、マール女史のような慧眼の方に認められる方々だ、さぞ優秀なのでしょうよ? しかぁしここは王国だ。王国騎士団の本陣だ。取り仕切っているのはなのだよ。…。」


ご機嫌に喋っていたかと思えばドスの効いた低く響く声で刺してくる。ゴードン団長とマールさん、両者の間にバチバチと火花が飛び散っているかのように錯覚するほど、2人の仲は険悪のようだとこの短時間で見てとれた。



「…わかりました。ではトーマさん達はこの私とさせて頂きます。邪魔はしないと誓いましょう。それで良いですよね?」


「ふんっ、 邪魔をしないと言うのならお好きにしていただければいい。精々うろちょろ情けない姿を晒して他の部隊の士気を下げない事だなァ。」



結局俺達は一声も発することなく、その顔合わせは終了したのだった。



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「…なんっなんですか!? なんなんですかあのヒゲー!」


「配信してなくてよかった、 大荒れでしたよきっと…! ムカつくー!」


「トーマ。 倒してきていい、?」


と大荒れの女性陣。



「ごめんなさい… 私の力が及ばないばかりに皆様にご不快を…。」


「気にしなくて良いっすよマールさん!慣れっこっす!」


そして力が及ばなかったと落ち込むマールさんに、それを慰めんとするダーシュ。あまりにも賑やかな天幕であった。



「とりあえずウカ、そんな事したら王国にいられなくなるからやめような。」


因みに既にゴードン団長と顔合わせした天幕からは離れマールさん個人の、教団組が使用している一角にある天幕へと移動しているため不和がどうの不敬がこうのでしょっ引かれる事は無いだろう。



「ゴードン団長は貴族の出でして…。 言うなれば貴族派の考えの持ち主、その中でも過激派で有名なのです。」



-貴族派。


有り体に言えば貴族至上主義。貴族でない者を認めず、貴族である者が全て。貴族こそが優秀な血筋である。といった考えの持ち主達の総称である。


王国ルートのシナリオで関わると聞いていたからこその知識であり、なんでも貴族派と国民派の対立、そのどちらかの派閥に参加してシナリオを進める、というものであった。



貴族派というワードがここで出てきた以上、王国ルートに片足を突っ込んでいると見るのが正しいだろう。まさか聖国も絡んでいたとは思わなかったが。


そして現在、俺達はその貴族派から敵対視、というほどは行かないが、それに近い対象として見られている事だろう。




兎にも角にも。

この件を無事に終えても何か厄介事が待ち受けているような、前途多難なクエストである事に間違いはなかったのである。

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