第22話 2日目へ向けて。

いつの間に調べていたのか、ハルがオーレンの街にお勧めの落ち着ける場所があるという事で、座標をアメさん班に共有、現地で集合しようと話はまとまり、現在俺達はその集合場所である落ち着いた印象を受ける喫茶店、【小鳥の止まり木】へとやってきていた。



「ここですここです! 個室もある喫茶店で会議とかにも良いのかなって思いまして!」


街のメインストリートからは少し入り組んだ先にある店のため現地民N P Cからしても知る人ぞ知る、といったような店なのだろうか、混んでいるという事もなくすぐに個室へと通された。


ハルの言うとおり人も少なく落ち着ける印象だ。隠れ家的な店、というのはこういう物を言うのだろうか? 今後情報が出回ってプレイヤーからおすすめ店!などと紹介されるような事がない限りはこの落ち着いた雰囲気は続くのだろう。



「えっ、雰囲気素敵すぎませんか…? 配信で紹介したいけど雰囲気崩しちゃうし〜っ… 我慢しときましょう…。」


とは後から入店した配信していないオフのアメさんの言葉である。


アメさん班も揃い全員集合したところで、各自ドリンクと軽食を注文、今後の動きを決めるべく話し合いが始まった。



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「まずは問題のランキングからっスね。」


とダーシュの言う通り、俺達の現状を把握した上で話す必要がある。

現在、ランキングはこうなっていた。



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エリアイベント 1日目


1位 チーム プリーデ

2位 チーム トーマ

3位 チーム おもちたまご


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本来、レイド戦として参加した皆に分配されていたであろう、ヴォルタートルが持ち合わせていたポイントを俺達のパーティがほぼほぼ独占した結果、順位が大きく上昇していた。


これでも追いつけないという事は1位もボスポイントを独占できたのだろうか、それとも効率の良い狩場が?


徹夜して、など無理をしてまで上位に入ろうとは考えていないし、無理をパーティに強いる気などあるわけもない。そういった話はパーティを組む前に全員と意識共有をしていた為他のメンバーも志は同じだろう。


と言いつつ俺も根はゲーマーだ。強敵と戦いたい、という感情がメインとはいえ参加する以上、優劣がつく以上上位には憧れるし可能な限り目指したいものである。



ぐだぐだと考えてしまったが結局言いたいことは、【無理のない範囲で入賞を目指すべく、効率の良いポイント稼ぎが重要となる。】という事だ。



「リスナーさんのコメントに【高ポイントを抱えたレアモンスター】ってのが存在するみたいです。明日以降は積極的に狙いたいですね。」


「レアモンスター… そんな簡単に見つけられるんですかね…?」


「地道に探すしかない…っスかねぇ、?」


結局情報が足りていないのだ。

足で稼ぐしかない、という物量に頼った策しか思い付かず、きっと最初のイベントという事で盛り上がっている徹夜上等の猛者廃人達にはこのままでは負けてしまうだろう。



特にこれといった案が誰かから出ることもなく、話し合いは難航を極めていた。



「うーん…。 あ、 ここの喫茶店のマスターさんなんですけど、ちょっと情報に明るい、って前来た時に話したお客さんに教えてもらったんです。もしかしたら何か聞けたりしませんかね…?」


「このまま足で稼ぐよりは建設的かもしれない、ダメ元で聞いてみようか。」


物は試し、ダメ元で!と以前も利用していて関係値を築いているだろうハルにマスターとの会話を託し、俺達も何もしないよりは。と掲示板等を徘徊し情報を探し回った。



結果として検索チームは成果無し。まぁそんなランキングに影響を与えるような情報を持っておいて掲示板に挙げるような人間は根っからの聖人やお人好しでない限りMMORPGという土壌である本ゲームにはいないだろう。基本的には競い合うのが大好きなのだ、他のプレイヤーより頭ひとつ抜けるような情報は基本開示せず味を占めるだろう、こちらもダメ元の策だった。



暫くして、ハルが聞き込みを終えたのか戻ってくる。



「あの〜…。」


「そっちもダメだったか…。 これは本格的に足で稼ぐしかないかもな…。」


「えっと、情報はあったんです! 特殊なモンスターの目撃情報、って感じで、」


…!

まさかの成果アリ。

先程まで良い案が出ず、消沈していたメンバーの顔に掛かっていた陰に光がさす。



「ただ…、うーん、イベントと関係があるかと言われると難しい。みたいなニュアンスのお答えでしたね…。」



そう言われてなるほどと浮かれた気持ちをリセットする。確かにその通りであり、イベント時でなくても特殊モンスターは出現する。今回得られた情報の対象がいかに特殊だったとして、その特殊性がイベントのポイントとして反映されているかは確証を得られないのだ。



「よく分かんねえっスけど、難しいこと考えないでやっちゃいません?」



また思考の海に沈みかけた時、あっけらかんと言い放つダーシュ。



「…それもそうだな、このまま闇雲に稼ぐよりは良い結果を得られるかもしれない。 後のみんなはどうだろう?」


「良いと思いますよ? 特殊モンスターって響きが楽しそうですし配信にも映えるかも…!」


「ん。トーマについてく。」


と、全員賛同の声が出た。

明日の目的は特殊モンスター、話が固まった事で明日の時刻と場所を決めて本日は解散、という運びになった。


ダーシュは少し動き足りなかったのか、もう少し稼いでから寝るというので、無理をしすぎないよう釘を刺し別れる。



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翌日、休日ということもあり、少しでもポイントに貢献しようと集合時刻より早めにログインする。


10位圏内にとどまれていれば良いけど…と期待せずランキングページを開いた俺は度肝を抜かれることとなった。



「あいつ一体何時まで狩りしてたんだよ…。」

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