第21話 あとしまつ
================================
フィールドボス:ヴォルタートルを討伐しました。
MVP:天王洲 アメ
================================
リザルトウィンドウによって、フィールドボスが討伐された事が平原に生き残っていた全てのプレイヤーに知らされた。
まぁあれだけの大爆発を起こしたのだ、後から来て人のアイテムを使用しトドメを刺しただけの俺が貢献度競争に関わってくる訳もない。
ほとんど何もしてないじゃないかと自分の行動を顧みて1人反省会していると、集合しませんかとアメさんからメッセージが届く。
それもそうだな、と所々滑りそうになる足場に気をつけながら、亀から下山するトーマであった。
================================
「ん? うぉー! トーマさんだー! お疲れー!」
配信中だろう、テンションの振り切れたアメさんに向かい入れられる。
「お疲れ様、あの爆発… 洪水はアメさんが?」
「そ! ウカっちに貰ったアイテムでドカーン!とね!」
一歩踏み間違えれば即退場の緊張感の中やってのけたのだ、きっとアドレナリンどばどばなのだろう。いつも以上にテンションが高い。
「ナイス爆発だったよ。 お陰で突破できた、ありがとう。」
「あーしはウカっちの作戦に乗っただけだし! ダーシュさんが居なかったら隙はなかったし、ハルちゃんがいてくれなかったら逃げられてなかったから!」
「…そういえば他のみんなは?」
「ダーシュさんが周囲の索敵、ハルっちは被害にあったプレイヤーを回復魔法が使えるから、って見回りに行ったよ〜。ウカっちはその付き添い!」
「み、見回り…?」
というかウカが索敵に出た方が効率的では…?と一瞬考えたが、ダーシュと女性陣の相性は悪い気がする。これが最適解なのだろうと納得した。
「そーそー優しすぎるよね〜 てゆか! トーマさんやばかったよ!? 何あの動き!」
…? 動き?
何か変なことしてたら配信にも乗るだろうしめちゃくちゃ恥ずかしいぞ…
「え、変なことしちゃってた?」
「ちっがーう!!! 頂上まで登ってった時の動き! あれ1個も掠ってないでしょ!? コメ欄も大絶賛だったんだから! ウカっちがあんな目するのも納得だよ〜! あの目にあーしも勇気もらっちゃったくらいだし!」
矢継ぎ早に褒め殺してくれるアメさんに小っ恥ずかしくなる。なんとかして話題を切り替えなくては。
「ありがとう、えーっと… あの目っていうのは?」
「ウカっちが作戦を伝えに来てくれた時にね? トーマさんなら絶対成功させる!って強い自信のある目をしてたの!」
話題を切り替えることには失敗したらしい。
しかし切り替えられなかった話題にも気になる所が出てきてしまった、墓穴になるかもしれないが少しの好奇心から深掘りしてみる。
「ウカがそんな事を?」
「そっ! あーしもあんなに強く信用されてみたいなーって思うくr
「余計な事は言わなくていい。」
いつの間に近づいたのだろうか、口元を抑えられもがもがとしているアメさんの背後には、渦中の人物であるウカがいた。
「おかえり。 色々と言いたいことはあるけどまずはお疲れ様。」
「ん。トーマも良い動き。」
「ありがとな、と…その前にアメさんを解放してあげてくれ…?」
「ん〜…。わかった。」
普段感情を読みにくいウカにしては、珍しく不服そうな機嫌を隠し切れていない声を出しながらアメさんを開放する。
「…ぷはっ、もーウカっち〜!? せっかく爆発から生き残ったのに死んじゃうかと思ったんけど!?」
「余計なこと言おうとした。 アメが悪い。」
「もーそんな照れないでよ〜?」
「む、照れてない。」
共に死線を潜り抜けた間柄だからだろうか、とても仲良くなっているように… いや、アメさんのコミュ力あっての成せる技だろう。キャラを作っているとはいえ、作ったからといって誰とでも仲良くなれるわけではない。見習いたいものだ。
なんて考えていてふと違和感に気づく。
「…そういえばウカはハルの付き添いで動いてたんだよな、 ハルは?」
「ん。あっち。」
あっち。と指差す方を見てみると、
「ねーウカ〜? 急に走っていかないでよ〜…」
走って来たからか、疲れたようなゆるゆるの声を出しながらぱたぱたと走ってくるハルが見えた。
「ハルもおかえり、 見回りなんて優しすぎないか? 俺には到底思い付けないんだが…。」
「あはは…っ、せっかく回復魔法を覚えたのに使いどころがまだ無かったので…、 そう、練習です練習!」
と言いつつ、実際メインの目的はそれではなかったのだろう、照れを隠そうと必死に熱くなった顔を仰いでいた。
そうして暫く話をしているとダーシュも索敵を終えて帰ってきたので、今日のまとめと明日の話をしようと俺達は落ち着ける場所を探すべく一度オーレンの街へと戻ろうという話になり、配信をここで締めるということでアメさんダーシュの2人とは一度別れ、別々に街へとむかうことになった。
================================
オーレンへの帰り道がてら、心の片隅に引っかかっていた、気になっていた事を聞いてみる。
「そういえばなんで呼び札なんて待ってたんだ?」
「んぅ? ネームド討伐の報酬。」
そういえば後回しにされた報酬があったな。と頭の中で無くしていたピースが見つかったような、そんな気持ち良さのある納得を得た。
しかし運営も太っ腹だ、初回討伐とはいえ本来であれば中盤で手に入るような、かつ使い道によってはフィールドボスに致命傷を与えられる代物だ。消耗品だから、という理由にしても少し大盤振る舞いなように感じてしまう。
「全部使い切っちゃったのか?」
「んふ。 ひーみーつ。ね?」
無表情のまま唇に人差し指を当てるウカは、どこか楽しそうな、それでいてこれ以上言及されないよう釘を刺すような圧を、どこか感じさせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます