第15話 Call of Coal
一悶着あったがなんとか会話が成立するくらいまで2人を宥めることに成功した。
「なるほど… 先輩の旧知の方…と。」
「センパイのリアルの後輩…っスか…。」
というかダーシュが女の子に食って掛かる事に驚いた。そんなにセンパイ呼びが被りたくなかったのだろうか…?
違和感を感じつつもこのままではイベントどころの話ではなくなってしまう。ここはお互い矛を納めてもらい、これから始まるイベントの話をするべきだろう。
ここで改めて全員で今回のエリアイベントについて確認する。というのも先程、運営の方からメッセージが入っていた。
内容として改めてのルール説明とパーティ申請だ。
前者はその名の通り、運営の方で既に告知されていたルールを改めての告知。これは周知の内容だった為全員で再確認に終わる。
そして後者、本イベントの集計ランキングはパーティ単位である。これは5人一緒に行動しようが1人1人個別で行動しようが全てのポイントが集計される。
そのメンバーは申請しないと計上されないよ、といったものであった。
またパーティとして代表者を選出しなくては行けなかったのだが、何故か俺に決まった。
配信者であるアメさんが良いだろうと提案したのだが悉く却下された。主に俺を除く全員にだ、解せない。
5人一緒に動くのは効率が悪いだろう、と主に俺とダーシュの間で意見が合致し、2パーティに別れイベント期間中は行動、何か1パーティでは対処し切れないイレギュラーに遭遇した場合集合しよう、と話が決まった。
ダーシュの様に公式で行われたアシスタント決定戦を勝ち抜いているならまだしも、たまたま居合わせた俺があちらの配信にあまり顔を出すのも視聴者に下手な刺激を与えてしまう、と前回知ることができたしハルにもそういう物だ、と解説をもらった。
なるべく控えたほうがいいだろう。
思ってたんと違う。と言わんばかりの顔をこちらに向けて来たアメさんの事は見なかった事にして、俺達は目前に控えたイベントのために動き出した。
…と言ってもすぐ支援に入れ、かつお互いの狩り効率を妨げないちょうど良い距離感を保って動こう、という話なのでそこまでの行動はしない。
また3日間に及ぶイベントのためそこまで本腰を入れてアイテムを揃えておかなくては行かないというものでもなかった為、補給しやすいよう街からすぐの箇所にある【オーレンの平原】をメイン狩場に決めたのもそこまで動かなかった理由にある。
ランキングは最終日を除いて常に確認することができるため初動で俺達がどこまで着いていけるか分かるだろう。その動きを見てからまた集合しようととりあえず2時間の狩りだ。
さて、この5人でどこまでやれるのか。
ワクワクが止まらないトーマであった。
================================
それからというもの、俺達は平原のモンスターを狩り続けた。
モンスターの難易度としては森を超えた先のまだまだ序盤の街周辺。そんな場所にいるその辺のモンスターが強敵なわけもなく、そこまで苦戦を強いられることなく順調にポイントとなる石炭を稼げていた。
そして1時間が経過。
ランキングはこのようになっていた。
================================
エリアイベント 1日目
1位 チーム プリーデ
2位 チーム バイト
3位 チーム おもちたまご
4位 チーム トーマ
5位 チーム フェザン
6位 チーム もののふざむらい
7位 チーム ジーク
8位 チーム ノーリス
9位 チーム シーカ
・
・
・
・
・
================================
見たところそこまで悪くないように見えるが、俺達全員24時間戦い続けられるわけではないのでここから順位は下がるだろう。
10位以内にしがみ付くには少し心許ない状況であった。
しかし、トーマの気持ちに不安という翳りはない。
あの過疎ゲームにこんなにも夢中になって戦っている人がいるのだ。
もう誰も前線にいなくなってしまったAVOで俺より上がいてくれるのだ。
こんなの心躍らない訳ないじゃないか…!
まだ見ぬ強敵ともなり得るプレイヤーにも興味が尽きない。
俺の新AVOは始まったばかりだ。
================================
side 天王洲アメ
「よっしゃ! 配信開始しま〜! はーい皆さんこんばんは! 現代に甦った天っ才踊り子!天王洲アメでーっす! やほー!」
>待ってた!
>やほー!
>やほー!
>アメちゃーん!
>やほー!
>今日もAVO!?
>今日からイベントだー!
>やほー!
>今日も可愛すぎる
>やほー!
「そして前回の配信を見てくれたんなら分かってんよね! アシスタントのー…? ダーシュっち!」
「お前らの代わりにナイト勤めてくから任せろ!」
>ぐぬぬぬぬ
>悔しいが強すぎる
>負けました
>あんたに託す!
>あれは強すぎた
>異論はない…ないけど…!
>ぐあああああ
>脳破壊されてる同志がこんなにも…
「もうイベントは始まってっから、遅れないように頑張るよ!」
ぐっと拳を天に掲げ、トーマさんの足を引っ張らないようにとモンスターを狩りに駆け出した。
…1時間と少し経ち、何か周辺にピリピリとした違和感を感じる。
目が合ったダーシュさんも既にその違和感に気づいていたようで、メッセージ機能を立ち上げていた。多分トーマさんに連絡をとっているのだろう。
そんな私のなんとも言えない空気感に対する不安が顔か挙動に出ていたのか、コメント欄にも影響していた。
>うおー!アメちゃん動きいい!
>ランキング乗ってるのかな?チーム名教えて欲しいー!
>ん?
>ダーシュも勝ち抜いたのを納得させられる強さ
>これなら俺のアメを任せられる
>ん?
>アメちゃん?
>なんかあった?
>アメちゃーん?
>なんかあったのかな?
>ダーシュも顔に余裕ないなった?
「何か…来る?」
無意識に口から飛び出たつぶやきは、何かに気づいて出た言葉でも、何かを見て、聞いて出た言葉でもない。
言うならば… 直感。
その時、平原に黒い何かが現れる。
いや、その何かが平原に広がる大きな影だと気づいたその時、ダーシュさんに抱えられその場を離される。
ズドンッ…!
馬鹿みたいに大きな音がしたと思えば地面は揺れ、土煙が立ち昇る。
さっきまでいた場所にいれば少なからず影響があったかもしれない。抱えられていたところから下ろされて、ギリギリ助けられたのだと今になって気づく。
「あの、ありがt「今は集中。 こりゃあちょっとやばいね…!」
雰囲気の変わるダーシュさん。
その言葉にダーシュさんに向けていた視線をそちらへ向ける。
火山かと形容したくなるような、大きな山のような亀がそこに鎮座していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます