第5話 遭遇!緑鬼!
side 天王洲 アメ
とりあえず話を聞きましょうか。と優しく笑いかけてくれた男性、とりあえずひと安心。
>アメちゃん配信中って言った?
>アメちゃんちょっとキャラ違うw
>は?何この男。アメちゃんに近づいてんなよ
>こういうアメちゃん新鮮ー!
>緊張してるアメちゃん可愛いw
>困惑してる笑
>配信中って言わないと迷惑になるかも!
「あ、! ご、ごめんなさい! ちょっと待ってて!」
急いで配信モードを休憩に切り替える。
そんな私を頭の上に【?】アイコンでも浮かんでいるかのような顔でこちらを見ていた彼は、気を遣ってくれてか話しかけてくれた。
「えーっと、アメさん、で良いのかな? 俺はトーマ。よろしくね」
「あ、はい! ごめんなさい挨拶もなしに! 天王洲アメっていう名前でV idleしてます! …ご存じだったりしますか、?」
「いや、ごめん。俺そういうの見てないんだよね…。」
「いえいえ! 縁のない方には難しいお話でしたよね! 実は…」
案件配信の話や配信中だった話、配信に映ってもいいか等の話を切り出した。
「どおりで見たことないアイテムだったわけだ。これが配信用の機械?」
「はい、イロプスって言うそうです。今は休憩モードになってて配信は止まってますっ。」
「なるほどな〜。 っと、それで配信の件だっけ?」
「経験者さんとお見受けしますし、もしお時間よければいろいろ教えていただけないかなと…」
装備が違うからそうじゃないかな、って期待で話しかけたけど、見たことないって言動も経験者さんぽい。
「ん〜配信か… AVOやったことのない人も見てくれてるんだよね、?」
「そういった人に楽しさを広めていくのが案件配信だと思ってます!」
めちゃくちゃ悩んでる…
だめだったかなぁ…
「…わかった、協力させて欲しいな。時間があるから最初のクエストクリアまで、って条件はついちゃうけども…」
「全然構いません!ありがとうございます♪」
優しく笑いながらオッケーしてくれるトーマさん。最近特殊なファンの方もいて少し疲弊していた私には癒しや安心と言ってもいいような答えだった。
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気持ちを切り替え配信を再開しないと。待ってくれてるファンの方もいるしトーマさんの時間だってある。
配信モードを再開しようとしていざ押さん、というところでトーマさんに伝えておかないといけない大切な事を思い出した。
「あっ! トーマさん! 実はなんですけど私配信中はキャラ作ってまして… 気にしないでいただけると助かるんですが…」
苦笑いしながら伺う私。
「ん、りょーかい。 どんなキャラが来ても動揺しないように気構えとくよ?」
そう言ってにっこり笑い返してくれるトーマさん。女性への扱い慣れてません?モテるんですかね…
変な方向に走り出した思考を引き戻し、今度こそ、と配信を再開する。
「ごっめーん!お待たせ! 配信許可もらってきたよ!」
トーマさんはというと一瞬面食らったような顔をしていたが、すぐに気を取り戻していた。
>おかえりー!
>おかえり!待ってた!
>男いるの?
>アメちゃんは1人でも良いんじゃないかな…
>許可もらえてよかったね!
>あれ、侍ニキじゃね?
>おかー!
>協力してもらえそ?
>ソロでよくね?
>もう少しで着くから僕が案内するよ!?
>なんか見たことある顔立ちの人だなあ
「てことでこの人ー! トーマさんて言うんけど手伝ってくれることになったよー!」
「どうも、トーマです。最初のクエストクリアまでお手伝いしようと思います。俺からはコメント欄は見えていませんがよろしくお願いします。」
礼儀正しいトーマさん、配慮が嬉しいです。
そういえば男の人とコラボ?みたいな事するのは初めてだな…コメ欄がちょっと怖い。
怖気付いちゃダメ、って先輩も言ってたしトーマさんにも失礼だ。進行進行っと。
「さっそく案内してもらっていー?」
「ああ、任せてくれ。」
トーマさんに先導されながら私達は冒険者ギルドを目指すのでした。
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「すっごいたくさんの人だったね!視聴者のみんなも見たっしょ!?」
>すごかった!
>エルフのとこもっといたよ
>ヒューマンは控えめらしいね!
>半魔族といい勝負かもw
>受付の人可愛かった!
>クエストふぁいお!
>クエストドキドキだね
>みんなプレイヤーなんだもんな、すげー
>いまんとこすごい面白そう
ギルドでクエストを受注し終えてクエスト内容を確認。ゴブリン8体の討伐依頼達成でEランクに認めてもらえるみたい。
トーマさんは受注する時に「またか…」って呟いてたけどなんなんだろ…? にしてもふぁいお!って可愛いなぁ、真似しちゃおうかな。
「最初は資金もないし初期武器で行こうか、インベントリに【始まりの片手剣】は入ってる?」
「えーっと確か、コール!インベントリ! …あったあった! 装備したらいいん?」
「その通り、話が早いね。」
教え上手だなぁトーマさん。
私がちょろいだけなのかもだけど。
「クエストも受注できたし早速森に向かおうか。」
「りょーかい!師匠っ!」
「師匠?なんでまた…」
「教えてくれるから師匠じゃん!?だから師匠!いいっしょ?」
「まぁいいけど、小っ恥ずかしいな…」
優しいなあトーマさん。
>いよいよクエストか!
>師匠っぽいよねw なんかわかるw
>近くね?やっぱソロでいいって
>師匠ー!俺にも教えてー!w
>クエスト楽しみ
>男いらんて
>色目使うな
>僕がなんとかする
>なんかユニコーンさん多くない?
>気にしなくていいからねアメちゃん
この時の私は、目前に迫ったクエストに気を取られてコメント欄に意識が向いていなかったのでした。
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「…はい。クエスト達成確認いたしました。 お疲れ様です。 ゴブリンの素材もこちらで買取と伺っています。少々お待ちを。」
私達は特につまづく事も…ちょっとはあったけど無事に指定数を討伐し終え、報告へと戻ってきていた。今回の受付さんはクールなお姉さんだ。
…あんな怖いと思わないじゃん! なんか緑ぃしぼこぼこしてるし笑顔怖いし!グロテスク0%なんじゃないの!? コメント欄を見て出血とかの表現に関してのみでモンスターのビジュアルは統一って知れたけど…
モンスターの見た目でテンパっちゃった私を落ち着けて攻撃を受け持ってくれたトーマさんには感謝しかない。居なかったら私の冒険はここまでだったかも。案件でそんな失態する訳にはいかなかったから本当に助かった…
最終的には6匹のゴブリンにある程度動けていた、んじゃないかなって自分では思う。トーマさんも褒めてくれてたし。
コメント欄のみんなも楽しんでくれてたみたい、これからも頑張りたいな。
私が頭の中でぐるぐる考えているうちに受付嬢さんとのやりとりは終わっていたようで、目の前のウィンドウには私がEランクになった事が示されていた。全部任せちゃってごめんなさい…
これは後から気づいた事だけど、ゴブリンの素材分も全部私にくれていたみたい。おんぶにだっこだぁ…
「Eランクおめでとう。動きも悪くなかったしこれからに期待だね。」
「師匠のおかげだよ! 本当にありがとう!」
キャラとかじゃなく、心からの声だった。
トーマさんと今後もゲームできたりしないかなぁ、フレンド申請くらい許される、? イベントあるみたいだしパーティ組んでくれないかな…
もう時期約束の時間が終わる。ギルドから出てお別れ、となる前に誘ってみようと心を決めた。
「…あのっ!「見つけたよ!アメちゃん!」
…へ?
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