第15話 はじめてのクエスト 下

さてここから先、会敵するゴブリンは群れになる。いかに単独で居ようと、いかに周りを索敵し他のゴブリンが居なくとも。


暫くしてウカが見つけてくれたゴブリンは5体居合わせていた。編成として武器なし×1.こんぼう持ち×3、そして弓持ち×1の混成パーティである。ここに増援で集まってきて背後を取られるより、最初から視認できていた方がイレギュラーは少ないだろう。今回はこの群れを叩く。



「今回は奇襲をかけて頭数を減らしてから叩こうと思う。ハルの魔法を起点に動くぞ。」


「責任重大ですか…?」


「いや、そんなに気負うことはないよ。失敗したって大丈夫、その為にウカも控えてくれてるからね。」


「むふ。気楽に行こ?」


「わかりました! 2人を信じてさっきまでと変わらずいつも通り!ですね!」


「よし、ウカも準備はいいか?」


「ん。いける。」


みんな準備は整ったようでゴブリンの集団に奇襲をかける。



気づかれない距離にハルを配置、ゴブリンの集団付近の草むらまで近接組は接近している陣形だ。

ハルに合図をかける。


頷くと同時に光魔法を発射、狙いもよく弓持ちのゴブリンに直撃した。


合わせ俺も出る。1番近い距離にいたこんぼう持ちゴブリン目掛け抜刀、首元に吸い込まれるようにして滑る光は確定事項であったかのように、滑らかに相手の首を切り落とした。


と同時弓兵の背後にウカが忍び寄る。突然の奇襲に慌てていたゴブリンは更なる背後からの奇襲に対応できるわけもなく、短刀でその命を狩られたのだった。


残りは3体。こんぼう持ちが2、武器なしが1である。

俺はハルを守るように群れとハルの間に立つ。ここからはタンクの仕事だ。



「グギャギャ!」

「グギャ!」「グギャ!」


仲間を狩られた事でご立腹の様子の3体。

ウカはもう集団の付近から離脱しておりヘイトは1番近く、また1撃で切り伏せていた俺に集まった。



「ハル!ここからはさっきと同じだ! 落ち着いて武器持ちから当てて行ってくれ!」


「了解!」


クールタイムが明け次第、背後からもう1発眩い彗星ルミナスシュートが飛んでくる。

そこそこな速さの魔法をゴブリンの俊敏さで躱す事はできず、後ろに控えていたこんぼう持ちに直撃させた。



「ウカ!処理を頼む!」


声掛けをしつつ目の前のこんぼう持ちが放ってくる上段からの一撃を横に躱しつつガラ空きの腹を一閃する。高火力の刀から放たれる一撃は急所を狙わずともしっかり入ればそれだけで致命傷だ。

ゴブリンは出血を伴いながらその手にあった得物を手放した。


そうこうしているうちに仕事の早いウカによって手負だったゴブリンは処理される。結果として残るは武器なし1、ここまでくればイレギュラーが起こるような事もなく、3発目の魔法に溶かされるのであった。



『ピコンッ!』と電子音と共に視界端にアイコンが2つ生じる。クエストクリアの合図とレベルアップによるステータスボーナスの知らせだ。



「クエストクリア。これで晴れて冒険者だな、お疲れ様2人とも。」


「 やったぁ! お疲れ様でした!」


「ぶい。」


互いに労いながらドロップ品を回収し、冒険者ギルドへと戻るのであった。



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戻ってきた冒険者ギルドは、クエストを受注する者、また達成報告をする者と、来た時よりも賑やかだった。

それぞれの目的を持つものは受付へと並んでいる。ギルド脇にある受注ボードを見ているものはほんの数人であり、Eランクになるかどうかというライン上にいる者がほとんどといったところだろうか。


周りの例に倣って俺達も列へと続く。

暫く2人と雑談したり、先ほど上昇したステータスを見直したりと待っていると番が回ってきた。



「次の方〜! っておやおや?おぉー!戻ってきたんですね! お帰りなさい!」


なんの因果か俺達を受付し、送り出してくれた最初の受付嬢だった。



「認定クエストの報告に来ました、処理をお願いします。」


「はいはーいっ! …はいっ!みなさんのクエスト達成を確認いたしました! クエストクリアおめでとうございます! ゴブリンのドロップ品はこちらで買取もできますがいかがします〜?」


ゴブリンの素材は正直言って使い道はないに等しい。装備の材料にも使えるが今持ち合わせている装備が力不足となった時、ゴブリンの素材を用いる装備では既に心許ないと言えるだろう。



「ここは売却でいいと思うけど2人はどうだ?」


「ん。私は問題ない。」


「あっても何に使うか分からないんでお任せしちゃいます笑」


2人に意見を求めたところ賛成してくれたので、ゴブリンの素材を全て納める。



「ではごぶごぶの牙が11本で1100sですね〜 3等分できませんがどうします〜?」


ごぶごぶの牙が11本あったらしい。ごぶごぶて。


さておき分配である。



「初期資金の少ないハルが全額でいいんじゃないか?」


「ん。私もそれでいい。」


「いやいや! 私は連れてってもらってる身なのでお二人で分けてくださいよ!」


「ハル。正直端金。」


「言い方悪いがほんとにすぐ稼げる額だからな、気にしないでくれ、笑」


実際1000sはすぐ稼げる額である。それだけごぶごぶの牙の方は低いということだろう、流石は初心者向けモンスターである。



「それでは認定クエスト達成分の報酬 5000s、ハルさんに売却分を含めて6100sですっ! ご確認くださ〜い♪


そしてそして! Eランク合格です! おめでとうございま〜す!」


鉄色のカードが3枚。受付カウンターの上に置かれる。因みにソルsは電子決済だ。確かに5000s増えていた。



「こちらがEランク冒険者である事を証明してくれます【ギルドカード】になりますっ なくしちゃダメですよ〜?」


目の前に半透明のウィンドウが現れ、Eランクに昇格した事がポップな音楽と共に伝えられる。これで晴れて俺達3人はEランクとなった。

またギルドカードはインベントリ内、大切な物として扱われる為どう頑張っても無くせないのである。



「それでは〜! 今後とも冒険者活動を頑張ってくださいねっ♪ ふぁいおっ!」


そうして俺達はEランク冒険者として新たな冒険へと送り出されるのであった。



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「ね、トーマ。そろそろ時間?」


「ん?あぁ、もうそんな時間か。」


ウカに声をかけられ、結構いい時間になっていた事に気づく。危ない危ない。



「ハル、クエストもクリアしたことだし今日はここまでにしようかと思うんだけどどうかな?」


「もちろん大丈夫ですよ〜? リアルで何かご用事です?」


「そうと言えばそうだし、そうじゃないと言えばそうじゃないんだが…」


「んー? よく分かりませんけどまた明日も一緒に遊んでくれます?」


「もちろん。ウカも同じ時間で大丈夫だよな?」


「ん。だいじょぶ。」


「じゃあまた明日ですね! ウカも今日はありがとう!」


「また明日ね、ハル。」


「んじゃあ〜解散っ!」



ここで全員と別れることにした。

明日からも楽しくなりそうだ。

そう思いつつ一度ログアウトするのであった。




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side ハル



2人もログアウトしちゃったし少しステータスをいじったら私もログアウトしようかな、?

なんて考えながらステータスを振っていた。


その時、



『ぴんぽんぱんぽーんっ。もしもーしっ聞こえてますか〜? AVO運営の女神クレアトールと申します〜。 この度は皆様ご転生頂き誠に感謝の極みです〜。』




全世界に透き通るような声が響き渡った。




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