第14話

実のところ、返済期限まで、あと二週間もなかった。


 ――ぶっちゃっけ、一千万なんて大金、そんな短期間で用意できるようななんてない。


 ただただ少しでもなんとかしようと、バイト先である幼馴染の親戚が経営する老舗ホテルで、平日の仕事を終えた午後七時から午前零時まで、なんでもいいからさせてほしいと頼み込むぐらいしかできなかった。


 短期間だし、別にフロントで接客する訳でもないし、たまーにルームサービスで客室に行ってもらうこともあるだろうと言われたけど、そうそう同僚や知り合いにお目にかかるような偶然なんて、滅多にないだろうし。


 もし仮に、なんかトラブルになったとしても、ホテルの従業員がついててくれるって話だったし。


 ――まぁ、何とかなるだろう……。


 そう思っていたのだけれど。運の悪いことに、老舗ホテルで平日働き始めて、二日後に、それは起こった。


 午後九時を過ぎ、ルームサービスで頼まれた高級ワインと数種類のチーズの盛り合わせに、季節のカットフルーツなどなどを提供するため、それらの乗ったワゴンを押して、従業員の女性と一緒に客室に訪れていた時だった。

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