第11話

振り返るとそこには……。


 いかにもヤクザですって風貌の、今時どこで売ってるのって聞きたくなるような趣味の悪いシャツを着た、三十代後半くらいの細身の男と。


 いかにも下っ端っていう感じの、これまたいかにもって感じのゴールドのチェーンネックレスを首にぶら下げた、目つきの悪い大柄の若い男が立っていて。


「ちょっと。あんたたち、なんなんですか? 人んちに勝手に。出てってくださいっ! 警察呼びますよっ!」


「いやぁ、元気な妹さんですねぇ。秘書らしいじゃないですかぁ。顔も綺麗だし、胸も大きいし、いいスタイルしてますねぇ?」


「ちょっと。人の話ちゃんと聞いてますっ?」


「元気があっていいねぇ。オレの秘書になってほしいなぁ」


「お断りしますッ!」


「うわぁ、たまんねぇ。もーいっかい言ってくれる?」


「……」


 私の言葉にもまるで取り合う気配はないどころか、まったく話が噛み合ってないし。


 だんだん、怒ってるのがバカバカしくなってきた。


 兄も兄で、相変わらず正座したままで、何も言おうとはしないし。


 その間にも、二人の男は、なにやら意味深に、厭らしい表情を浮かべて、私の身体を舐めるようにして、上から下まで品定めでもするかのように見やった後。


 続けざまに。


「実は、お兄さんの侑磨さんが、友人の北村正輝まさきさんの連帯保証人になってたんですが、その友人の北村さんが、つい先日夜逃げしちゃって。


まぁ、高梨さんには申し訳ないんですが、こっちも商売なんでね。返済期日である十五日までに、一千万、返済してください。


でないと、お兄さんが引き継いでる、あの、料亭の橘って店、差し押さえさせてもらうんで。


嫌なら、侑李さんに、オレの知り合いの店でしばらくの間、働いてもらってもいいんですけどねぇ」


 そういってきた男の言葉により、私は兄の言動の理由を知ることになったのだった。

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