第7話

朝からウットリしてしまった私は、思わず溜息を漏らしてしまった。


「あら、高梨さんが溜息なんて、珍しいわ。どうしたの? 何かあった?」


「あぁ、いえ、ちょっと朝から寝坊してしまって……つい」


「あらあら、ますます珍しいじゃない。大丈夫? 悩み事なら聞くわよ?」


「いえいえ、本当に大丈夫ですから。あっ、そろそろコーヒーの準備しておきますね?」


「あぁ、大丈夫よ。夏目君がちゃんとしてくれてるわ。ほら、噂をすれば」


「夏目さん、おはようございますっ!」


「あぁ、おはよう」


「じゃぁ、拭き掃除に取り掛かります」


「はーい。よろしくね」


 それを三上室長に心配され、ウッカリ寝坊なんて余計なことを言ってしまった私は、内心気が気じゃなかった。


 何故なら、事情があるとはいえ、社内規則で禁止されている副業をやってるからだ。


 一瞬ドキリとしつつも、なんとか誤魔化そうとしているところ、どうやらコーヒーやお茶などの準備を終えたらしく、給湯室から戻ってきた夏目さんの登場により、三上室長の意識が逸れて、私は救われたのだった。


 そんな私たちの近くで、せっせと拭き掃除に励んでいるのは、副社長の男性秘書である蔵本くらもとりょうさん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る