再会は突然に、強烈に④
対して、あの変態男ーー社長は、春の柔らかな陽光が降り注ぐ窓際の自席で優雅に腰を据え、憎らしいほどに優美な微笑を湛えて、穂乃香の姿を満足そうに見遣っている。
その脇には、タブレット端末を手にした第一秘書の柳本と思われる細身の男性が控えている。
どうやらスケジュール確認が終わったところだったらしい。柳本は穂乃香に軽く会釈するとこちらに歩み寄ってくる。
そして穂乃香との簡単な挨拶を終えると柳本は久我山に業務連絡を始めた。
「久我山室長、例の件ですが」
柳本と久我山が言葉を交わしているのを尻目に、変態男と思いがけない再会を果たしてしまった穂乃香は、朝だというのにまるでオーラのように色香を振り撒く変態男の優美な微笑に、不覚にも見蕩れてしまっていた。
***
あの後、穂乃香は動揺しつつも社長ーー竹野内
久我山と柳本はというと、さっさと社長室から退室してしまい、穂乃香は変態男と二人きりにされてしまっている。
そこに社長から耳を疑うようなビックリ発言を受けたものだから、困惑しきりだ。
ーーこの変態男は一体全体何をほざいてくれちゃってるのだろうか。
社長の第二秘書として雇われた穂乃香は、これからこの変態男を秘書としてサポートしなければならない。
だというのに、ボスの前で盛大な溜息と暴言を吐きたい心境だった。
ーーダメダメ。ここは職場なんだから落ち着かないと。
ぐっと拳を握り込んで堪えしのぐ。
「あの……それは、どういうことでしょうか?」
穂乃香の困惑に満ちた言葉に、変態男はさも当然のことを言ったまでだ、とでもいうような表情でこちらの出方を窺ってくる。
「どういうこともなにも。今、言ったとおりの意味だが」
穂乃香も負けてなるものかと強い視線で見つめ返す。
後光でもさすかのごとく降り注ぐ陽光をバックにデスクに軽く身を乗り出した社長は、両肘を突き正面で組み合わせた手で顎を支えこちらをじっと見据えている。
心なしか愉快そうに見えるのは気のせいだろうか。
しかも口調は傲慢そのものだ。
あの夜は、物腰柔らかで丁寧な敬語口調だったように思うのだけど。酔っていたし聞き間違えたのだろうか。
だとすれば、あの夜見聞きした何もかもは酔っていた所為の幻覚だったのかもしれない。
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