再会は突然に、強烈に②
改札を抜け背筋をピンと伸ばした穂乃香は、青空を目指すようにして高層ビルが立ち並ぶオフィス街へと力強い一歩を踏み出した。
アスファルトをカツカツと小気味いい音を響かせながら颯爽と歩く穂乃香は、かっちりとしたブラックスーツに身を包んでいる。
どこからどう見てもデキる女性そのものだ。
頭を仕事モードに切り替え戦に向かう武将のような心持ちで、前だけを見据え、新しい職場への道のりをしっかりと踏みしめていた。
ほどなくして到着したのは、『竹野内グループ』本社社屋である。
ここ数年、働きたい企業ランキングで常にトップを独占しており、日本は元より海外にも進出して久しい、大手総合電機メーカーとして知られる超がつくほどの一流企業だ。
ドドンッという効果音でも聞こえてきそうな迫力で、視界いっぱいに映し出されている印象的な建物を見上げて、穂乃香はふうと息をついた。
オフィス街の中でも一等地に位置する本社社屋は、有名な建築家のデザインとあって、四方をガラスでぐるりと囲まれた立方体のスタイリッシュなビルだ。
お洒落な景観を重視するだけでなく、日々仕事に励む社員の健康面ややる気の向上を図るためにも、幸せホルモンーー脳を活発にさせる神経伝達物質を増やす効果があるという自然光をオフィスに取り入れ、明るく見通しのいい労働環境を整えるためでもあるらしい。
福利厚生もしっかり整っている上に、性別にかかわらず育休などの制度も充実しているとあって、女性社員の結婚後の離職率が低いことでも有名だ。
さすがは、働きたい企業ランキングのトップを独占しているだけのことはある。
よくこんな超優良企業に中途入社できたものだと自分でも思う。
実は、友人が秘書室長を務めているという雪から、『ちょうど欠員が出て募集かけてるって言ってたの。グッドタイミングじゃない!』と勧められて中途採用の試験を受けてはみたものの、まさか採用されるなんて夢にも思わなかった。
採用の連絡を受けた時には嬉しさよりも驚きのほうが勝っていたが、自分を必要としてくれているのだと思うと誇らしくもあった。
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