【家族 味】涙
今日日、忘れられないことがある。
それは私が小学3年生の時だった。
私は母、父、弟、祖父母と暮らしていた。
狭い二階建ての家はぎゅうぎゅうだった。
私が物心がつく頃、やっと気付いた。
お母さんは祖父からいじめられていた。
作ったご飯がまずい。
息子に見合った嫁じゃない。
お母さんが買い物へ行こうとすると浮気を疑われ、ついてくることもあったらしい。
私はその事をおかしいと思ってなかった。だって、おじいちゃんはたまにいじわるだけど、私には優しい時もあったから。
それに、私はお母さんがどれほど傷ついているのか汲み取れるほどの成熟した精神を持ち合わせてなかったから。
私が小学3年生になって祖父が亡くなった。私たち全員が悲しみのあまり涙を流した。
葬儀も無事終わり、やっと落ち着いた頃、お母さんと弟と3人になることがあった。
父は仕事、祖母は友達に会いにいった。祖母が出かけるのを3人にで見送る。
玄関の扉が閉まり、車の音が遠く聞こえなくなるまでお母さんは玄関に立ち尽くしていた。
いつまでも立ち尽くすお母さんに弟が声をかける。
「おかあさん?」
その言葉と同時にお母さんは膝から崩れ落ちた。
そして私たちを抱きしめる。
大粒の涙を流すお母さんに私も心配になって尋ねる。
「どうしたの?」
お母さんは声にならない声をあげる。
「よかった、、やっと、やっと、、、」
今になってお母さんの涙の訳が分かった。
今、お母さんは離婚し、一人暮らしをしている。
私は少し安心している。
もうお母さんはあんな涙を流す必要はないから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます