第47話
どんな人なのだろうか。リティアは待ちに待った本物のヒロインであろう“悪女”らしき人物の登場にすっきりしない感情を抱えていた。絶世の美女。実際にあった人はそう言っていた。会ってみたいような、会いたくないような。この気持ちは何だろう。どこか陰から、見られないかしら。リティアは自分の発想に驚いた。あんなに待ちわびていた人なのに。本当に彼女で間違いないのだろうか。どこか認めたくないような感情が胸を過った。
「何を、待ちに待ったヒロインの登場なのに。これで私も自分の恋を優先できるのというのに」
リティアは恋の仕方もわからなかった。リティアはここ最近の回想をした。こうやって出来事を分析するのが日課になっていた。ヴェルターの言動、微かな表情の変化、マルティンの言葉、目の前の紅いリボン、紅い宝石。
それに、確か宮廷に言った時は……。私は次から次へとたくさんの男性に出会った。だが、街へ出た時は……。アルデモート補佐官に出会っただけだった。まさに、ヴェルターとアン女王について聞いただけだった。リティアは、自分が暫定ヒロインからわき役へと変わったのではと予測を立てた。それならますます、待ちかねた“悪女”はアンであることが濃厚だった。
「ずっと一緒にいたヴェルが恋をして、私から巣立つのが寂しいのね」
リティアは自分の感情をそう結論づけた。それが一番しっくりくる気がした。
それからリティアはそれを証明するように街や他の令嬢のお茶会に出かけたが、目ぼしい男性に出会うことが無かった。宮廷に行ってもそうだろう。リティアは自分のここでの役割を終えつつあることを思い知ることになった。これからはもっと、顕著に現れるのではないかと思う。
ヴェルターからはアン女王が王都にお忍びで来る際に同行してくれと頼まれた。リティアは自分が会いたいか会いたくないかの感情は関係なく会うことになりそうだった。自らの目で、ヴェルターとアン女王が並ぶのを見ることになるのだ。
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