第14話
二人が言いあっている間にリティアは大反省をしていた。些細な事だと思っていた自分の言動に久しぶりに会った人まで気づかれたのだ。ヴェルターへの気持ちが冷めたのではない。冷める冷めないの感情は元々持ち合わせていないのだ。ここは、否定すべきところだが、ヴェルターに感情があると思われてしまえば、婚約破棄後、自分に向けられるのは多大なる同情心だろう。憐れに思われてしまえば、この気のおけない友人たちは表向きは王家に忠誠を誓っているが、友人としてはヴェルターをなじり、ヴェルターも心を痛めるだろう。そんなことは望んでいなかった。
優しい人たちに自分のために心を痛めて欲しくなかった。リティアはどうしたものかと考えあぐね、二人の会話に微笑むにとどめていた。
「リティ、止めて悪かったね。早く行かないと。彼が待っているだろう」
ランハートがそっと視線をヴェルターがいるだろう方向へ向けた。特に約束はしてないって、そう言いかけたのを飲み込んだ。もう余計なことは言わない方がいい。
「ああ、じゃあ、ここからは俺が送るよ」
ランハートの代わりにレオンが腕を差し出し、
「ええ、では失礼するわね。ありがとう、ラン」
リティアが礼を言うとランハートは、少しばかり心配そうな目でリティアを追ったあと背を向けた。
「リティ、本当に何かあったなら……」
レオンは口を開いたが、前から来る人影にそこで言葉を止めた。
「大丈夫よ、レオ。本当に」
事実、リティアはこの上なく大丈夫だった。レオンはリティアの言葉に素直に笑顔を向けた。
「フリューリング卿」
すっと横に避けたその人はレオンに用があるようで、リティアは遠慮することにした。
「レオ、ここからは大丈夫。ありがとう」
「ああ。じゃあ、失礼するよ。おっと、その前に」
レオンは側に立っていたレオンと同じ制服の男性に視線を移した。それに気づいた男性が
「私は先に行っていましょう」
と顔を上げたのをレオンがいや、と制止した。
「紹介、まだだったから。こちらは、ウォルフリック・シュベリー卿。私たちとは年も近い」
リティアは言われて、自己紹介をしようとすると目の前の男性が先に礼を尽くした。
「初めまして、オリブリュス嬢」
どこか、懐かしさを感じさせる人だった。
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