第13話
「リティ? 」
再び名前を呼ばれ、リティアははっと二人を見上げた。
「どうかしたのか? 」
レオンは金髪に碧眼というこの世界ではそう珍しくない髪色と瞳の色にも関わらず、ひときわ目を引いた。華があるのだ。柔らかで話しやすそうな雰囲気。それでいてひとたび剣を持つと人が変わったように凛々しくなると噂で聞いていた。
「ええ。二人、久しぶりだなって懐かしくなっちゃって。その、素敵ねレオン。騎士団の制服姿」
見てみたいな、レオンの剣を持つところ……。
レオンはランハートと違い、感情のまま目を大きく見開くと、リティアではなくランハートの方へバッと音がするくらいの勢いで顔を向けた。ランハートは苦笑いをしてレオンの驚きには答えなかった。
「リティ? しばらく会わない間に雰囲気が変わったな。以前みたいになかなか宮廷にも顔を出さなくなったし」
レオンにまで指摘され、リティアは安易に褒めたことを後悔していた。
「そんなことないわ。久しぶりだからそう思うんじゃない? 」
「うーん。そうか、確かにドレスの趣味が変わったか? えー、ヴェルターの趣味か? あいつに会いに来たんだもんな」
矢継ぎ早になされるレオンの会話に、リティアは一つだけ答えることにした。
「ええ、まあ、そうね」
リティアは、にこり笑顔を作ったがうまく笑えていなかった。加えてレオンは違和感を黙認する性格では無かった。
「なんだ、ヴェルターとうまくいってないのか。それで、宮廷から足が遠ざかっているんだな? 」
ランハートがガンッとレオンの脛を蹴り、レオンはぐっと息を詰めた。きょろきょろと青い瞳を探るように動かし周りに誰もいないことを確認すると息を吐いた。チッとランハートが咎めるように舌打ちをする。リティアは二人のやり取りにくすくす笑った。
「ヴェルターとリティアの関係にうまくいくも何もないだろう」
ランハートが声を低くして最もなことを言う。それはそうだ。二人は恋人ではなく王国の大人たちが対外的に判断し、決めた婚約者なのだから。でも、とレオンは反論したが、リティアもランハートに同意した。
「ええ、そんなことはないわよ、レオン。彼とはちゃんと定期的に会ってるわ」
「ということは……」
レオンは分析するように顎に手を当てて考えている。そして、ぱっと気が付いたように綺麗な瞳をリティアに向けた。
「ヴェルターは変わらずリティに会いに行ってるのに、リティはそうじゃないってことだ! 」
「……レオ! 」
ランハートが制止し、レオンはわかったよと肩をすくめた。
「ま、何かあるなら男女の事はランより俺に相談すべきだね」
「まだ、何も言ってないだろ、憶測で口を開くな」
「何だよ、ラン。お前も引く手あまただってのに誰にもなびかないと俺の耳にまで届いてるぞ? 」
「お前が軽薄すぎるんだ」
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