第63話

Sと同棲する前に、1度だけ覗きに遭ったことがある。



あれは、ララが2歳になり9月中旬位だった。





Tちゃんと途中まで一緒に帰り、1人家の方に帰ってる時。




後ろに歩いてる人がいるのは分かっていた。



だか、たまたま同じ道かもしれないし、家が近い人かもしれないと思っていたので



そこまでの危機感はなかった。





部屋が1階の為、夏場でも窓は閉めて行く。

ララがいるので、扇風機だけはつけたまま。





『ララ、ただいま』





いつも通りに出迎えてくれるララに、クッキーをあげ、9月中旬でもまだ暑く、部屋の窓を開けていく。





それから、部屋着に着替えようとした時だった。




『ワンワン!ヴゥーワン!』




寝室の窓の方に向かって吠えるララ。





『どうした?』





レースのカーテンだけは閉まってるが、遮光カーテンは窓の所だけ開いていた。





『閉め忘れたのか。教えてくれたの?』





吠えるララを抱き上げるが、まだ吠えている。





『今閉めるからね。』





窓の方に近寄ると、人影が見える。





は?






赤いTシャツを着てたのは分かるが、顔は見えなかった。





『覗いてんじゃねーよ!アホが!』





網戸越しに怒鳴り、ララを下ろし、網戸を開け窓を閉める。





『教えてくれてたんだね。ララ、ありがとう。』





その後、警察に電話を掛け、通報した。





警察が来て、色々聞かれた。




警察が来るまでの間、私は着替える事もせず、ララを抱っこしたまま、部屋の窓を全て閉めて待っていた。




抱っこしてると、インターホンが鳴っても吠えないし、窓が閉まっているとは、夜中なので。




その後、パトロールを強化してくれた。





その後、覗きに遭うことは無かった。



同棲を始めたのもきっかけかもしれないが。





今、思い返してもあの時の私は、冷静だったと思う。


きっと、ララが居たから。




そう、思う。

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