ハイファンタジーのキャラクター造形

今回はキャラクター造形の話について掘り下げてみます。

すでに『ハイファンタジーの世界観構築』で触れてますが、さらに……


今回は取り分けクレイジーかもしれないので、これもまた逆説的な考え方として、客観的に読んでみてください!



▼キャラクターの人数について


ストーリーに対してどれくらいの人数を描くか、ですが、種類によってだいぶ開きがあると思います。

一概に言えないのですが、迷ったらなるべく減らしていくと間違いないと思います。

これ以上削れないくらいシンプルにして、絶対必要なやつを残すとよいです。僕はそうしてます。賑やかしのキャラがいないとおもしろくないやつは、骨格がつまらないのです!



▼キャラ設定の掘り下げについて


どれくらいまでキャラクターの設定を決めるか、ということですと、僕の場合は『いる感』を大事にします!

いる感を高めて、姿形を想像できていれば、別に文字にしなくてもよいと思います。

そいつのことを、かなり長く考えていくと、『どう考えてもありありと、心の中にいる』という感覚になってくると思います。

親友か家族みたいに感じてきます。

細かなことはべつに決めないのですが、この『いる』って感覚がないと、(僕の場合は)つまらない話になります。

逆に『いる』感があると、細かな設定は天から降りてきます。

存在感が希薄なときに無理やり細部を決めても逆効果で、どんどんインチキ臭いキャラになります。

この『いる』感を主人公に持てたら、キャラクター造形は九割終わりです!(たぶん、、)


ここから少しだけ難解かもですが、、

この『いる感』の手法は、ユング心理学で考えると、集合的無意識や自己の深層心理にアクセスして、物語として表出しようとする可能性や、意識のゆらぎを読み解くことになると思います。

シンクロニシティや直観を拠り所とする、感覚的かつサイコな手法かもしれません!

(このあたりは、後ろでまた触れます)



▼コンフリクトについて


キャラクターを描く際、クライマックスでどう変化するか、ってことが重要です。そこで、あらためて作品のゴールと重ねて、コンフリクトという概念でキャラクター造形を語ってみます。

ややこしかったら、読み飛ばしでOKです!


(ここからは、しばらく先に書いた記事のコピペで 笑)

僕の思う、ハイファンタジーのゴールとは、

『コンフリクトの統合』です。

※コンフリクト=競合、葛藤、相剋です

もちろん違う書き方もあると思いますが、僕の場合はたいがい、このコンフリクト方式がハイファンタジーにフィットしやすいかなー、と思っています。

このコンフリクトの話はあらためてしますが、エッセンスだけ書きますと、、


『キャラクター内面のコンフリクト』

一人の中で矛盾、破綻しているところです。

例えば、アグレッシブだが暴力的になりやすいところを気に病んでいる人。

職業だと、優しすぎる殺し屋、コミュ障の交渉人、など。

コツとしては、『長所と短所が裏表の人格』を描くと、やりやすいと思います。


『キャラクター同士のコンフリクト』

主人公と、それを取り巻く人々のミッションがぶつかることで生じる相剋や軋轢です。


『世界とのコンフリクト』

個人と使命の相剋と軋轢。

役人なのに犯罪者を守るとか。

海が嫌いなのに船旅をするとか。

暗いのが嫌いなのに、世界が真っ暗だとか。


『統合』

これらのコンフリクトの両端を統合し、

『A-B=0』だったものを、

『A*B=X』にします。

このXが作品のテーマであり、鍵になってきます。

なお、物語における統合とは、ある意味でバランスを見つけるってことであり、『妥協』『発想転換』『変化』などいろいろあると思います。人生のように、、

『元気キャラだが短気→元気キャラで優しい』になった!とか。これも統合というか、自己理解と進歩です!


で、ここまでがほぼコピペでした。

補足していきます。



▼オセロとしてのコンフリクト


上に挙げたコンフリクトの中で、『世界とのコンフリクト』を『ストーリーの中心に置ける』のは、ハイファンタジーならではです。


普通なら、ミステリーなら謎解き、ホラーなら恐怖や怪異、ヒューマンなら対人コンフリクトなど、ジャンルごとのお約束やテーマがあるものです。

それらの中で、ハイファンタジーやSFが、この『世界とのコンフリクト』を中心に描けるのです。


なのでぜひ、『創造した世界と、そこに向き合う主人公』を描けるよう、主人公やキャラクターを造形するとよいはずです!


ここで先に挙げた、三つのコンフリクトが、ストーリーを推し進め、クライマックスを盛り立てていきます。


『世界とのコンフリクト』は使命と課題を明確に提示します。

『個人のコンフリクト』がその宿命に抗います。きっと主人公にとって、その使命が一番苦手なことなのです。

『対人のコンフリクト』は、仲間を信じられず、孤立の原因を作ります。だってその仲間は一見、なにもかも理解できない相手だから。


ここから試練を通じて、オセロのように少しずつ、何度も失敗しながら、『個人のコンフリクト』『対人のコンフリクト』に向き合っていきます。

そしてクライマックス。思いもよらぬ展開で、『世界とのコンフリクト』がなお強力に突きつけられます。

そこで試練の中での学びにより、『個人のコンフリクト』『対人のコンフリクト』を乗り越えて、最後に『世界とのコンフリクト』に向き合う。


そう、オセロのように配置された、『ひっくり返らないとたどり着けない課題たち』に阻まれながらも、一個ずつ裏返して、裏返されて、『世界』に挑んでゆく。それがコンフリクトとそこへの挑戦なのです。



▼『統合』と『ピーマン』と『成長』について


キャラクターの変化について、『成長』という言葉が使われますが、作者としては、成長の一言で片づけると曖昧になってしまうことが多々あります。


例えば、『ピーマンを食べられない』という問題の解決として、『食べられる』という結果を作れたら『成長』でしょうか? 『退化』ではなく本当に?

『ピーマンなんて食べなくてよくて、開きなおる』とかは?


……こんな具合に、成長って結構、『結果としての行動』が正統進化した場合に当てられる、下手したら傲慢な言葉なのかもしれません。

(別に、レビューなどで成長という言葉を使われることに対して、嫌ではまったくないですよ! 自作へミクロ視点で向き合う際に、逆説的に考えるときの話ですので)

で、必ずしも『成長』を書かなくてよくって、、


書くとしたら、『キャラクターが世界や自己を許して受け入れる』その過程や悩みや気づきを書いてあげるとよいのかな、ってことなんです。

『ピーマン食べれた!』でもいいですが、

でも、『食べなきゃいけないのに食べれなくて。でも好かれるために食べなきゃ!』

とか悩む中でも、イヤでも生きていかなきゃいけない。別にピーマン食べれない悩みくらいではみんな、死なないですよね。


その『ピーマンがイヤでも生きていく』そのために、なんらかの方法で誤魔化す。妥協する。トータルでそんな状況を受け入れる。

これが『統合』なんです!


(やった、、話が着地した、、)


だから、必ずしも世界とのコンフリクトは解決しなくてもよくて、『こうやって生きていくことにしよう』でもいいのではないでしょうか?


とはいえですね、物語としては、『主人公が克服できそうなことなら克服するし、無理だったら、画期的な、試練の意味を踏まえた気づき』とかは用意したいところです。


ここまでくると、クライマックスにおいて、書き手にとって主人公が最大の敵というか、説得すべき相手になります。



▼サブのキャラクターについて


ここまでが長かったですが、主人公格の話でした。

サブキャラクターについては、もう好みでよいと思いますが、なるべくオセロのように、主人公格とは違う見た目や性格がよいです。

これらもなるべく、『いる』感が出るまで一緒に暮らしてみてください。

(なんだこのエッセイ、、)



▼いる感、の補足


いる感について、曖昧な印象を持たれるかと思い、補足させていただきます。

そこで、いるレベルによって定量化してみます。(ギャグではない!)


レベル1

いい名前を付ける。見た目のイメージがある。


レベル2

見た目が克明に想像できる。声質など明確。


レベル3

脳内会話できる。細かな生い立ちや設定が、ちょっと想像すると大抵すぐ決まる。


レベル3までくると、たぶん、作品にしたときも読者さんに魅力的に伝わると思います。また、ここまでくると作中でキャラがブレないし、むしろ、『ブレる言動はやってくれない』と思います。



▼ユング心理学について


ここまでで、僕がかなりユング心理学を元に、人物造形や人間の心の問題を捉えていることに、気づかれる方がいらっしゃるかもしれません。

ここまで話題に上げた、ヘッセやル=グウィンも、一部の作品に(あるいは広範の作品に)ユング心理学のエッセンスを含めてきました。

世の中のコンテンツにおいて、心の変化や成長、心の闇や自己受容を語るとき、かなり高い確率でユング心理学のエッセンスが入っていると思います。

『シャドウ』『ペルソナ』『心のコンプレックス』『自我』『シンクロニシティ』『集合的無意識』

などのキーワードは聞かれたことがあるかもしれません。


ゲームだとそれこそ、『ペルソナ』とかが人気ですが、これもあからさまにユング心理学です。

ユング心理学は現代人の、心を紐解く絶好のヒントになると思いますし、近代の物語のキャラクター造形に、なくてはならないものだと思います。


おすすめ書籍を挙げるとすると、以下などがおすすめです!


ユング心理学入門: 〈心理療法〉コレクション I

https://www.amazon.co.jp/dp/4006002203/



いろいろめちゃくちゃな創作論ですが 笑

一応僕としては割とマジです!



さて、結構がんばって書いたので、今回はこれくらいでご容赦ください。

もしニーズなどありましたら、さらに掘り下げます!

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