ハイファンタジーの世界観構築

今回は本格ハイファンタジーのオリジナル世界観の構築について、語りたいと思います。



▼『やりたいこと』を決める


どんなジャンルでもそうですが、書きたいこと、やりたいことがいくつもあると、ブレて迷走してきますよね!

そこで、書こうとしているポイントを考え、その一点に絞ることが大切です。


また、書きたいことのポイントは、いろんな視点があると思います。

『あるキャラクターを書きたい』『ある世界を書きたい』『あるシーンを書きたい』など。


例えば僕の作品ですと、


『滅びの国の魔女紀行』

絶望的な滅んだ世界をサバイバルして、希望を見出す過程を文芸タッチで描きたい。


『蛇霊記』

重厚な和風世界観で、蛇神を宿した少年が運命に立ち向かう旅路を描きたい。


『白花冥幻譚』

ダークファンタジーと和風幻想文学を合わせた世界の、雰囲気を描きたい。


こんなふうに、『やりたいこと』がそれぞれバラバラなのですが、明確だと、世界を構築しやすいです。


それでは、やりたいことから、世界観を逆算して構築するステップを、僕の作品で例示してみます。


以下で例を示していきますが、おおまかには、以下を考えていきます。

・おおまかな方向性

・神話や大仕掛け

・キャラクター

以降、細部は心のゆとりの中で考えて、最終的には雰囲気と勢いでなんとかしましょう!



▼『滅びの国の魔女紀行』の世界構築


絶望的な滅んだ世界をサバイバルして、希望を見出す過程を文芸タッチで描きたい。

――というのがやりたいことです。

そのままだとかなり暗く重たくなるので、軽くするために、魔法少女二人組を主人公にしました。

また、文芸的な雰囲気とするため『謎の氷の災厄』で世界が滅んだ後を描きました。大火とか地震とか疫病とかより神秘的かなと。

したがって、『主神は氷の女神』としました。

氷の女神が、怒りによって世界を氷に閉ざしたことにしました。

けれど、氷雪の世界を少女二人で旅するのはハードすぎるので、『氷の年の期間だけ猛烈に寒くて、それが終わってから主人公たちが目覚める』としました。


あとは魔法については。

ひとりは、サバイバルで実用的な、灯りをともす魔法使いとしました。

もうひとりは、触れたものを灰にしてしまう魔法使いとしました。灯りの魔法に対して、超強力だがデメリットが大きい力によってバランスを取るイメージです。(かなり早期に、灰の魔法のイメージは降りてきていました)


こんな感じで、やりたいことに対して、効果的な世界やキャラクターを造形していきました。



▼『蛇霊記』の世界構築


重厚な和風世界観で、蛇神を宿した少年が運命に立ち向かう旅路を描きたい。

――というのがやりたいことです。

主人公のイメージとしては、なにも持たざる、知らざる少年としました。その代わりに、蛇神の霊が宿っているという。

世界については、蛇神の主神が信仰されているものとしました。

それに、蛇神を祀る巫女組織などを構想しました。

巫女の術はいずれも、たいがい巫女の命を削る、リスクの高いものとしました。



こんなふうに、やりたいことから、ゼロベースで逆算して考えていくと、作品の大枠ができてくると思います。



▼細部の設定


設定の細部については、特に神話や社会基盤などは重要です。

現実世界でも人間って、『お上や政治の悪口ばかり。天気や宗教イベント(お祭り、盆暮正月)の話ばかり』しますよね。

挨拶代わりに登場人物が、そんな社会基盤に対するセリフを言っていたりすると、雰囲気が出てきます。


なので、『ハイファンタジーの世界を作るには、現実世界の人々が、どんなふうに社会を捉えて、言動しているか』を考えるとよいです!


ちなみに、重要なところだけ詰めておいて、他は雰囲気でもよいと思います。


僕の場合は、以下のように切り分けることが多いです。


『単位制度』

お金の単位は、オリジナルのほうが良い気がします。

長さや重さは、現実の特定の時代と同じでもよいかなと。このあたりは雰囲気で。


『神話』

たいがい僕の世界だと最重要なので、主神、太陽神を中心に、決めておきます。

世界の神話は、『その文化の根本原理』が主神と繋がることが多いです。

日本の縄文時代では、狩猟がメインだったため、幸をもたらす山や海や、猪や鹿などが信仰されました。

弥生時代では、稲作が発展しはじめ、日照と季節を重んじることで、太陽神である天照大御神が信仰されました。

ユダヤ教やキリスト教では、都市国家における、『契約』を重んじる男性神が信仰されました。

こんな感じに、『ある文化の根本原理』が信仰に転換されるのです。

そこから人々は、宇宙を言語化するための、神や法則を想像して、宗教的な規律としていったのです。

柱が決まると、周辺の天使的なものなども決まると思います。


なので、ハイファンタジーにおいても、風土や文化を土台にした最高神を定義し、信仰を設定すると、リアルになるでしょう。

それに、神の『真相』と『人間が理解する神の解釈』とのギャップが、ドラマやミステリーを産むかもしれません。



『社会基盤』

現実世界のある時代をモチーフにすると、整理しやすいと思います。

共和制とか封建制とか決めておくとよいと思います。



上に挙げたようなことが定まっていると、セリフやストーリーにまで落とし込んで、雰囲気作りができてくると思います。


このあたりが決まると、ほぼ土台が固まってくるのではないでしょうか。



▼固有名詞


大きなところから決めるのも大事ですが、例えば登場しない偉い人の名前を決めるより、主人公の身の周りの細部を決めるとよいと思います。

日頃利用する道具とか、好きな花とか、積み上げてきた訓練の詳細とか。

身の周りを詳細に描くと、臨場感がだいぶ上がります!

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