第18話

ようやく着いた海




それは綺麗で広かった




持っていた荷物を砂浜におき、脱いだ靴と靴下も隣に並べる




素足で踏む砂浜は柔らかく、その感触がひどく懐かしかった




砂の感触を味わうように海に向かって歩く




引いていた波がこっちに戻ってきて、冷たかった




でも、その冷たさが心地好かった




それにふっと笑うと私はそのまま足を進めた




海に浮かんだ月に近づく




でも、その距離が縮まることはない




まるで、両親との距離を現しているようで腰辺りまで浸かると一瞬足が止まる




それが嫌で止めた足をまた進める




右足を出した瞬間、




「、、っ」




そのまま私は海に沈んだ




思わず止めてしまった息




ここで初めて私は死にたくないのだと気づいた




あれほど会いたいと思っていても、それは今ではないと私は気づいた




でも、私は泳ぐことができない




このまま死んでも問題ないか




この世に私が死んで悲しむ人はいないんだ




そう考え、目を閉じたとき沈む方とは逆の方向に引っ張られた




「、、っ、ゴホッゴホッ」





いきなりの空気に咳込む




捕まれた右腕の先にいる人に視線を向ける




そこには




「海水浴はまだ早いよ」




傷みを知らないであろう綺麗な茶髪をかき揚げながら、紫の瞳を私に向ける




「、、綺麗」





綺麗な顔をした男の人がいた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る