第7話
何を考えているのか謎の琴葉が、女子バスケ部に入部する事が決まった。
「幼なじみちゃんもどう?」
「いや、私は……」
「駄目」
私にも声を掛けた五十嵐さんに、陸がスパッと声で拒絶を表した。
「は? 何で陸がそんなん決めるのよ」
「莉音ちゃんが怪我したらどうするんだよ。何かあったら困るし、何よりこんな野獣だらけの部活には置いておけない」
「失礼だなぁ。てか、過保護過ぎでしょ」
「過保護でいい。とにかく莉音ちゃんは駄目」
お互いが不満そうに視線を交わす。
私の意見は無視かと思ったけど、入部するつもりはないし、仮に入部したとしても、この二人のやり取りをずっと見ていられる程の余裕を持ち合わせてはいない。
「陸の事なんて放っておいて、気が向いたら言ってねっ!」
「だから駄目だって言ってんだろ」
「陸には言ってないでしょ」
目の前で繰り広げられる二人のやり取りを、妙に冷めた目で見てしまう。
どうしたものかと困っていると、ピーっと笛の音が鳴る。
「莉音ちゃん、もう少しだから教室で待ってて。一緒に帰ろ」
「でも……彼女、いいの?」
「……何で?」
「え……」
あからさまに眉間に皺を寄せた陸の反応に、私は更に困る。
まさか、そんな反応になるなんて思わなかった。
「とにかく待ってて。先に帰っちゃ駄目だよ」
強く言われ、私が返事を返す前に戻ってしまった陸の背中を見送る。
「あの
確かに、陸への好意が見えなかったわけじゃないから、微妙な表情を返すしかなくなってしまう。
「あーいう“私あまり恋愛に興味ありませーん”みたいな顔して近づいて来る女は割と厄介だから、気をつけた方がいいよー。あ、これ経験済みな私からの意見ね」
何があったかは聞かなかったけど、やたらと真剣な表情の琴葉の言った言葉が引っかかった。
私は颯爽と帰ってしまった琴葉と別れ、ただ待っているだけでは暇だから、いつも通り教室でノートにペンを走らせる。
勉強は好きだ。
集中してる間は、余計に事を考えなくて済む。
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