第5話
高校に入学して、初めての夏を迎えたある日、転入生がやって来た。
その子は少し変わっていて、何故か私は彼女に懐かれてしまった。
「イケメンの幼なじみとかヤバーっ! あ、心配なさらず。私はイケメンには興味ないので。私どうも男子の完璧フェイスが苦手でさぁ……前の学校でも「男の趣味悪い」ってよく言われた。だから、手は出さないから安心してね」
楽しそうに言われ、私は苦笑するしかなかった。
明るくてノリもよく、誰に対しても変わらない態度の彼女と、仲良くなるのに時間は掛からなかった。
友達という友達を作らなくなった私に、ちゃんとした“友達”が出来た瞬間だった。
彼女に心を許したのも早く、悪い事は悪いとハッキリ言える、正直でまっすぐな彼女には、好感すら持てた。
だからこそ、安心して陸に紹介した。
「よろしくね、
「おぉぅ……眩しいですぜ、旦那……。莉音ちゃんて、ずっとこの神々しさと一緒にいるの? 胸焼けしない?」
「うーん……分かんない……ずっと一緒だし」
「でも、何か、二人が並ぶと美男美女で、圧巻ですな」
一人納得している彼女、
陸も昔から珍しいモノ好きだから、今までいなかったタイプの彼女に、興味を持ったのだろうか。
いつもニコニコ笑顔でいる陸は、影で“癒し王子”と呼ばれている。
陸自身が気づいているのか分からないけど、陸は人によって笑顔を変えているみたいだけど、琴葉に対しては壁のある笑顔じゃない事に、少しは彼女に心を開いてくれたのだとホッとした。
「ちょっと独特だけど、いい子そうだし、よかったね」
優しい笑顔で言った陸に、私は頷いた。
まるで自分の事みたいに一緒に喜んでくれる所も、陸の好きな所だ。
手に何かが触れる感触。
見ると、陸が私の指に指を絡めている。
同じくらいの高さだった陸が、見上げないと目が合わない程背が伸びたなぁと改めて思っていると、陸の少し落ち込んだ表情が見える。
「陸?」
「莉音ちゃんに友達が出来るのは嬉しいけど、僕と一緒にいてくれる時間が少なくなるの、ちょっと寂しいな……」
陸の甘えモードが学校で出るのは珍しい。
基本学校ではこのモードを出す事は、二人きりの時にしか出ない。
寂しさを全身で表すみたいな、まるで垂れ下がった耳が見えるようで、胸がギュっとなる。
「だ、大丈夫よ、陸。友達が出来たからって、私達の何かが変わるわけじゃないんだし、そんな顔しないで、ね?」
背伸びをして、背の高い陸の頭に手を伸ばして撫でると、嬉しそうに頬を緩ませて柔らかく笑う。
昔から変わらない、癒しの笑顔だ。
この笑顔に、何人の女の子が落とされて来たのだろうか。
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